どうなる俺氏。 ページ14
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親友の制止も聞かずに車を降り、包帯男と向き合う。
男は包帯をシュルリと緩め、飲み込まれてしまいそうな程の美しい瞳を露わにさせる。けれどもその目の奥には酷く黒々とした何かが渦巻いている。
綺麗であると同時に、不気味だった。
「お前はこの場に関係ない、さっさと消えな」
冷え切った目が柴田に向く。もちろんのことながら柴田は「嫌に決まってんだろ!」と車から降りようとする。
でも、これ以上コイツを巻き込みたくないという思いから「俺は大丈夫だから」と男の指示に従うように促した。
柴田はまだ何か言いたげだったものの、俺の真剣さが伝わったのか静かに目を伏せてハンドルを握った。
ごめんな、色々心配とか、迷惑とかかけて。
ホント、ごめん。
「……次は北海道、行くぞ」
「おうよ」
ニシシと笑って手を振る。
まあ、その時まで俺が生きている確証は無いんだがな。残念なことに。
柴田の運転する車が去った後、再び俺は包帯男と向き直る。
男は相変わらず冷めた口調で「やっと二人で話ができる」と一歩俺に近づいた。
俺は己の首元にカッターを突きつける。
「……なんのつもり」
「脅しだよ、見てわからん?」
予感があった。こんな展開になってしまうのではないのかという予感が、逃げている時にずっとあった。
その不安を少しでも無くすため、お守りみたいな感じでポケットの中に入れていた。絶対に使うことがありませんようにと心の中で小さく願いながら、親友にも内緒で隠し持っていた。
でもその刃を自分に向ける羽目になるのは予定外だった。
やれやれ、やっぱり人生って色々あるな。
「お前たちは天秤にかけている。
俺という人間の価値を……いや、この力の価値を、天秤にかけている。違うか?」
まっすぐな目で男を見る。
男は動揺の一つも見せず、俺の話を静かに聞いている。
異様な空気が流れる中、話を続ける。
「怖いよな、恐ろしいよな。
蘇生の力は人を惑わせ、争いを起こす。お前たちはそれを危惧している。
だが、それと同じくしてお前たちは躊躇っている。今後再び現れるかもわからないこの力を失うことに!」
刃物を首に押し立てる。
チクリという痛みと共に生温かいものが肌を伝った。
「……一応聞いてあげる。要件は何かな」
俺はフンと鼻を鳴らし、ゆっくり口を開いた。
「これ以上アイツを巻き込むな」
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ガシヤマ(プロフ) - セネリオさん» コメントありがとうございます! 最近ギャグセンスを極められるようお笑いいっぱい見てます、面白いって言ってもらえて嬉しいです! (3月28日 15時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
セネリオ - 文脈おもろすぎてウケる。オリ主同士でここまで面白くなるの,って驚きました。とにかく良き…! (3月28日 9時) (レス) @page8 id: 989a98e326 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます! 男の友情は美味しいですよね、こういう友達いたらいいな〜って思いながらなんやかんやで生まれたのが柴田君です。最初はもっとモブみたいな感じにしようかと思ったんですけど結構主要キャラみたいになっちゃいました。 (3月11日 21時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
サンドレラ2世 - 友情系大好きです。読んでてめっちゃ興奮しました。生まれてきてくれて有難うございます。 (3月11日 21時) (レス) id: 0ee11eb3e3 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - 春の川さん» コメントありがとうございます! オリ主同士の絡みってあんまり需要無いかな〜って思って結構省いちゃいました。今思うとものすごく後悔しています、はあ。 (2月12日 15時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ガシヤマ x他1人 | 作成日時:2024年1月21日 23時