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――歩いている。
目的地もなく、歩いている。ただ歩いている。
真っ暗で、寒い。海で溺れた時を思い出す。
足が重い。その場をずっと足踏みしているみたいで全く進んでいる感じがしない。
けれどもこの歩みを止めてはいけない気がした。じゃないと、自分が自分じゃなくなってしまう気がしたから。
何かから逃げているとか、どこかを目指しているとか、そういうのじゃない。私という人間が存在するために歩く、そんな感じだった。ああ、意味がわからない。
ここはどこで、私は一体全体……何をしている？
その瞬間、景色がパッと変わる。私の部屋だ。
ゆっくりと上半身を起き上がらせ、ボサボサの髪を触る。身体は汗でベタついていて、服が張り付いている。意識もボンヤリしていてこれ以上動こうとは思えなかった。
不規則な呼吸、時計の針が進む音。それだけが部屋に響いている。窓から差し込む光は赤く染まっており、今が夕方であることが伺えた。
あの日から何日経ったか。少なくとも一週間は過ぎた……はず。その間、私はずっと家でボーッとしているばかりだった。大学は留年覚悟の無断欠勤、それぐらい何をする気にもなれなかった。喫茶店にも行っていない。外の光を浴びる気分になれなかった。絵を描きたいとさえ思えなくなった。
あの頃の熱が嘘みたいに冷めて、何をやろうとしても力が抜ける。今ではどうやって筆を持っていたのだろうと不思議に思うぐらいだ。
最近まともなご飯を食べれていない。水と部屋にあった菓子を食べては吐いてを繰り返して。
もう、自分がどうやって生きてきたのかもわからなくなってきた。
インターホンが鳴る。
当然居留守をする。こんな死人みたいな顔を見せるわけにもいかない、それにきっと会話もまともにできない。
ガチャ、と玄関の扉が開く音がした。誰かの足音が近づいてくる。
そういえば鍵かけたっけな……かけてない。というか勝手に私の家にあがりこんで…………まあ、どうでもいい。
今は何もかもがどうでもいい。
「お久しぶりです、全然来てくれないんでこっちから来ちゃいました」
以前聞いた時と変わらない明るい声色。場の空気に全くそぐわない陽気さは綺麗に空回りしている。赤い翼は夕日と相まっていつもより濃く見えた。
何しに来たんだよ……コイツ。
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ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます！ 夢主ちゃんの心情表現は丁寧に細かく書くことを心がけました。読んでいただきありがとうございます。 (3月13日 20時) (
レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
サンドレラ2世 - 読んでて凄くドキドキしました。夢主の心情が鮮やかに描かれていてよかったです (3月13日 8時) (レス) @page31 id: 0ee11eb3e3 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - ひとやさん» コメントありがとうございます！ 夢主ちゃんには幸せになってもらいたいところですが……ホークスと相思相愛ってわけではないんですよねぇ。でも、私はこういうの大好きです。 (3月13日 3時) (レス) @page30 id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
ひとや(プロフ) - 最後、タイトルをひっくり返したような文章で終わってあるのが本当天才かと思いました……夢主ちゃんのようなキャラも個人的に新鮮で、先の展開に加え、それに対して夢主ちゃんがどうなるのかまでとても気になりました！素敵な作品をありがとうございます！ (3月13日 3時) (レス) id: 47f18479c2 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます！ 心温かいコメントのおかげで執筆活動が捗ります、本当にありがとうございます！ 皆さんから愛される小説を書けるよう精進します。 (3月11日 22時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ガシヤマ x他1人 | 作成日時：2024年3月1日 23時
