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「負けたんだぞ……？ 銀賞だったんだぞ？」
「私は銀賞でも満足だしなぁ。そもそも金賞に固執してたわけじゃないしねぇ」
「は、はあ！？」
ガン、と頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
思わず声を上げてしまい、周囲からの視線が一気に集まるのを感じた。けれども女はかまうことなく言葉を続ける。
「絵は楽しく描けていればそれでいいんです。
皆が私の絵を見て感動してくれたらいいなって思いでいつも出展してるんだぁ」
そう言って春の妖精みたいに可愛らしく笑う。しかし私は唖然とする他なかった。
金賞に……固執していなかった？ 楽しく絵が描けていればそれでいい？
つ、つまり、この女にとっての金賞はただの付属品に過ぎなかったというわけか……？ 私は、こんな生半可な人間にずっと負け続けていたというわけか……？
「それにしても、今回金賞取った子凄いよねぇ」
「は、え……」
「日に日にレベルが上がっていって、最後には私も抜かれちゃったんだもん。
きっと相当な努力をしてきたんだろうねぇ、凄いねぇ」
女の言葉に呼吸が止まる。
汗がダラダラ流れ、手が震える。頭がグワングワンと揺れ始める。周囲の音にエコーがかかり始める。
き、聞きたくない……、聞きたくない。
「ずっと尊敬してたんだぁ、一度でもいいから会ってみたいよ」
フラリ、と一歩後ろに下がる。
な、なんだよこの女……! なんだよこの女！
私の異変に気付いたホークスが「大丈夫ですか？」と心配そうに肩に手を置く。
違う、違う……！ ああ、違う！ 気持ち悪い、気持ち悪い！！
「気持ち悪いんだよ！！！」
私の叫び声が会場内に響き渡り、一瞬にして場が静かになる。
咄嗟に手で口を塞ぐももう遅く、全てが後の祭り。
周囲はヒソヒソ私に人差し指を向け、目の前の天才女は不思議そうな顔をして「大丈夫？」と鈍感にもまだ善人ぶりを見せつけている。
差し伸べられた手をパシンと払いのけ、そのまま速足で会場の入り口を目指した。
走って逃げ出したかった、だがそれだとあまりにも自分が無様じゃないかと我に返ってやめた。
「急にどうしちゃったんです？」とホークスが後から着いてくるが全部無視して外に出る。その頃には大粒の涙がボロボロ流れ始めていて自分がどこへ向かっているのかもわからなかった。
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ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます！ 夢主ちゃんの心情表現は丁寧に細かく書くことを心がけました。読んでいただきありがとうございます。 (3月13日 20時) (
レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
サンドレラ2世 - 読んでて凄くドキドキしました。夢主の心情が鮮やかに描かれていてよかったです (3月13日 8時) (レス) @page31 id: 0ee11eb3e3 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - ひとやさん» コメントありがとうございます！ 夢主ちゃんには幸せになってもらいたいところですが……ホークスと相思相愛ってわけではないんですよねぇ。でも、私はこういうの大好きです。 (3月13日 3時) (レス) @page30 id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
ひとや(プロフ) - 最後、タイトルをひっくり返したような文章で終わってあるのが本当天才かと思いました……夢主ちゃんのようなキャラも個人的に新鮮で、先の展開に加え、それに対して夢主ちゃんがどうなるのかまでとても気になりました！素敵な作品をありがとうございます！ (3月13日 3時) (レス) id: 47f18479c2 (このIDを非表示/違反報告)
ガシヤマ(プロフ) - サンドレラ2世さん» コメントありがとうございます！ 心温かいコメントのおかげで執筆活動が捗ります、本当にありがとうございます！ 皆さんから愛される小説を書けるよう精進します。 (3月11日 22時) (レス) id: d005014dc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ガシヤマ x他1人 | 作成日時：2024年3月1日 23時
