戦略的忘却【約ネバ】

空虚 ページ43

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現状を表すのは、レイの「もういい、農園(ここ)で死のう。」の一言で十分だろう。
費やしてきた6年間を棒に振られ、水泡に帰され、レイは傷心のあまり生きる希望を見失った。
エマはノーマンに生かされた命を繋ごうともがくも、ノーマンがいない悲しみから逃れられず、もがく腕に力が入らない。頭が働かない、息が苦しい、動けない、どうしよう、どうしたら、とうわごとのように私に漏らした。
2人の代わりに私が頑張ろうとするも、自分に自信がないことが足を引っ張り、間違ってしまったらどうしようという怯えが一歩を踏み出させず、立ち止まり悩むばかりで何もできない。
司令塔であった年長者を失い、それでも自分たちだけでも頑張ろうと奮闘するドンとギルダも、はっきりとした計画もないままに曖昧な行動原理で動くせいで口喧嘩が続くばかり。刻一刻とタイムリミットが迫る不安もそれを助長し、冷静な判断ができているとは言い難い。

「やるときは、ママ、後ろからお願いね。安らかな顔の最期(ディナー)のほうがいいでしょ、折角だから。」
思いもよらず、泣き崩れそうな声が出た。骨折により寝泊まりしている私とそれに付き添うママ以外誰もいないメディカルルーム(救護室)で、つい言ってしまった言葉だった。


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