好き以上、愛してる未満。 (ページ38)

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ゆっくりと自宅のドアを開けた。

玄関の中に入ると、中からは何も物音がしなくて静かだ。

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靴を脱いで、リビングに向かう。

龍斗はどこにいるのだろうかと辺りを見回すと
リビングのソファの上で眠っているのが見えた。

龍斗を起こさない内に昼食を作ろうと思い
なるべくソファから距離をとってキッチンへと進む。

エプロンを付けて、冷蔵庫の中を覗いた。

あまり時間はかけられない、とチャーハンを作ることにした。

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チャーハンが出来て、サラダなどの盛り付けも済ませた。

龍斗を起こそうとソファに近づいて、

そっと顔を覗き込んだ。

「...ふふ、」

寝息を立てて気持ちよさそうに眠る姿は
どんなに大きくなっても
子供の頃のようにあどけなく、可愛い。

自然と伸びた私の手は
龍斗の前髪を梳くように触れた。

龍斗を愛おしいと思う気持ちで。

この状況は紛れもなく、私が龍斗の"姉"として生きてきた事を物語っていたと思う。

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「...あれ、」

ふと視線を顔の下に向けると
龍斗の頬に涙を流したような跡があった。

私が家を出ていく時には無かったもの。

「...龍斗、...泣い、たの...？」

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人を好きになるとは、どういう事だろうか。

私には、まだ分からない。

ただ、分かったことは。

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私の"好き"と彼の"好きは"違うもので、

人を好きになるという事は

嬉しくなったり、楽しくなったりだけではなく

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苦しくなって、

その人を想って涙する事だ。

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私は龍斗の頬をそっと撫でた。

大声出してごめんね。

傷つけてごめんね。

あなたは何も悪くない。

人は誰を好きになってもいいはずだから。

でも、世界は残酷だった。

『......何で、姉さんが泣いてるの、』

顔を上げると、龍斗は既に起きていて、私を見つめていた。

「えっ？あれ、？何で...私、泣いてんだろ」

頬をつたう涙に、私は気づかなかった。

『ごめんね、姉さん。...俺、あんなことしちゃって』

そう言って立ち上がった龍斗は、しゃがんでいる私と視線を合わせるようにして、同じくしゃがみこんだ。

「ううん、...龍斗が謝る、ことじゃないよ。...私こそ、」

同じ位置にある龍斗の目を見ながらそう伝えると、伸びてきた細くて綺麗な指が私の頬をつたう涙を拭った。

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