episode.38 ページ43
阿部side.
「どーぞ…って言ってもただのお粥だけど。」
貴「わわ、ちゃんとしたご飯とか久しぶりです…！」
すぐに作れて身体にいいものなんてこれくらいしか思いつかなくて。それでも今の彼女には丁度いいのか嬉しそうにいただきます、と手を合わせて食べる姿を見ているとなんだか幸せな気分になった。
貴「ん、美味しいです…！」
「お口にあったみたいでよかった。」
Aの顔色もちょっとは良くなった気がする。
みんながみんなそうとは言わないけれど、作曲とかは本当に大変なんだなって彼女を見ていると思うしだからこそ側に居てあげたい、なんて言ったらAはどんな顔をするのだろう。
「あ、そうだ。彼氏みたい、って言ってたからせっかくだし食べさせてあげようか？」
少しでも俺のことをそう見てくれるように意地悪な言葉を紡ぐ。今までの俺だったらこんな事は言わないのに、彼女の前だと自然と口から溢れてしまうのだから不思議だ。
貴「っ、か…からかってますね！？」
(顔真っ赤、かわいい。)
緩む口元を見たAは何を勘違いしたのか唇を尖らせて俺への悪態をつきつつ食事の手を進め、綺麗になったお皿を前にご馳走様でした、なんて手を合わせる姿もなんだか可愛らしくて思わず手を伸ばす。
さらりと流れる黒髪と綺麗な黒の瞳が俺を捉えるのがやけに印象的で。
貴「亮平くん…？」
そこから先に進もうとしてしまう俺を制するその声にはっとして視線を逸らした。
「っ……ぁ、いやさ？ちゃんと完食して偉いな、…って。つい頭撫でちゃった。」
貴「今日は私のことすごい子供扱いするね、亮平くんと私ちょっとしか歳変わらないけど。あ！もしやまた私のことからかいましたね？」
「んふふ、ごめんごめん。ついAが可愛くてさぁ。」
苦し紛れの言い訳のつもりだったが鈍い彼女には気づかれていなかったのだろう。ホッと胸を撫で下ろす俺に文句を言っているけれど生憎今の俺には聞く余裕すらなくて。
(あくまでも俺たちは仕事仲間、なんだな……。)
分かりきったその結論を何度頭で唱えても納得なんていかない。それでも今は。
(この関係のままが丁度いいのかも。)
心のどこかでそう思っている自分がいて、ぎゅっと拳を握りしめた。
続く (更新停止中)
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ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
