episode.37 ページ42
貴女side.
阿「でも無理しすぎ。はい、今日は仕事お休み。俺がAをたーっぷり甘やかしちゃう。……というかこの部屋寒すぎない？」
慣れた手つきで私の背中を押しながらリビングのソファに座らされ、全く思考が追いついていない私を置いてスタスタとキッチンの方に歩いて行く亮平くんをぼーっと見つめる。
阿「キッチンと冷蔵庫の中の物勝手に使ってもいい？あ、それよりまず温かいココア淹れようか。Aはそこで待っててね？」
「ちょ、ちょっと待って。私全然元気だから…！それに私のことなんかどうでもよくて、曲！！曲を亮平くんに聴いてほしくて……ですね…。」
あまりの手際の良さに流されつつも我に返って立ち上がった私に彼はまたむっとしながら歩み寄る。するりと自然に頬に触れられ抵抗する暇もなく視線が絡んだ。
阿「言ったでしょ、今日は仕事の話はなし。曲は聴きたい気持ちはあるけど今はAの方が心配なの。どうせAのことだからろくに食事もしないで曲作ってたんでしょ？」
確かにここ最近といえばエナジードリンクだの手軽に食べれるシリアルバーが多すぎてろくに食べた記憶はないが、そこまで彼にはお見通しなのだろう。ジトりと見つめられた視線に耐えきれず思わず逸らした視界の端でため息が聞こえた。
阿「Aのことなら分かるよ。曲に向き合う姿勢もずっと近くで見てたんだから。でもたまには息抜きも必要。
だから今日はリラックスして俺に全部任せといて。」
そうして頭を撫でられてしまえば抵抗はできず再びソファに沈む。まるで亮平くんの言葉は魔法だ。
ただの仕事のパートナーのはずなのに期待してしまって、それでいてなんだか嬉しくてキッチンに立つ彼を見つめ頬を緩める。
静かな空間に若干の気まずさを覚えてテレビをつけるも視線はキッチンに向かってしまう。
阿「ねぇ、そんなに見られてると緊張するんだけど。」
手先を見たままそう呟く姿も新鮮で、再び頬を緩めた。睡眠もあまり取れていない頭ではもちろん思考が上手く働くはずもなく。
「なんだかこうして亮平くんが料理作ってるの彼氏みたいだなって。」
阿「………なら本当にAの彼氏にしてくれる？」
そんな都合のいい言葉は私の耳には届いておらず。
「ん？なんか言った？」
阿「なんでもない！〜〜〜っ、いいからもうテレビ見てて！！」
相変わらず手元に視線を向けたまま放たれた言葉にはーい、と気の抜けた返事を返すだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 815人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
