episode.33 ページ38
阿部side.
「お願い！！」
貴「お願いと言われても…。」
「カフェの新作フラペチーノ、それにAの好きなチョコにクッキーまでつける。」
貴「うぅ…。」
「更には喫茶店のオムライスとスイーツもつけちゃう。」
貴「もぅ…恥ずかしいから1曲だけですよ…？」
1曲聴きたいな、と言った俺のお願いに渋々ギターを抱えて座る姿がなんだか新鮮で。
貴「昔路上で歌ってた曲なんて、今考えるとセンスないのばっかりで恥ずかしいからあんまり歌いたくないのに…。あ、フラペチーノにチョコ、クッキーにオムライスにスイーツも絶対約束ですからね？」
なんてイタズラっぽく笑うのが可愛らしい。
もちろんって頷いた俺に満足したのか試し弾きをしたAの纏う空気が変わる気配に息を呑んだ。
貴「〜〜〜♪」
「っ……。」
(うそ、だろ…。)
彼女の歌う曲に聴き覚えがある訳ではない。それなのにふと、勝手に元気をもらっていたあの時の路上の女の子を思い出した。
何年も前路上で歌ってた事がある。
そんな人どこにでもいるから偶然かもしれないけれど確信があった。Aに出会った時から感じていた妙な空気。初めて会った気がしなくて、どこか懐かしささえ覚えたあの感情。
(なんだ、俺がずっと気にしてた子はこんな近くにいたんだ…。)
気づいてしまえば自分がこれまでAに惹かれていったのも必然だ。ずっと話しかけようと思っていた彼女とこんな形での再会をしたなんて運命としか言いようがない。
彼女はこの事に気づいているのだろうか？
それとも最初から俺のことなんて見えていなかったのかも。気になる真相を確かめたくて、バクバクと早くなる心臓をぎゅっと抑え問いかける。
「っ、あのさっ…」
貴「わ、今いいフレーズ浮かんだ！！」
「……へ。」
ギターを傍に置いてペンを走らせる姿は先程の彼女とは全く別人。殴り書きみたいに見えるそのメモを片手にパソコンを使って音を繋げていくのを後ろから覗き込む。
真剣に机に向かうAに伸ばした手をぐっと引いた。
本当は色々な感情が抑えきれないくらいに膨れ上がって、すぐにでも気持ちを伝えてしまいたいくらい。けれどそのタイミングはきっと今じゃない。
「Aだったんだね。俺の探してた人。」
貴「何か言いました…？」
「ううん、なんでもない。」
立てかけてあるギターを倒さないようにそっと触れて『ありがとう』と聞こえないように呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 815人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
