episode.30 ページ35
貴女side.
「………と、いうわけなのですが思ったより曲作りが上手く進んでいなくて…。すみません、私の力不足で。」
阿「……。」
「あの、亮平くん？」
阿「…へ？」
ぴくりと肩を揺らす彼を怪訝そうに見つめると、彼もこちらを見返してきたがすぐにその目は逸らされた。
佐久間さんと3人での食事以来、何度か顔を合わせるもギクシャクした雰囲気は拭うことができず。今日は一段と静かな亮平くんの反応は鈍い。
阿「あ…ごめん。なんだっけ。」
「いえ…今日は亮平くん疲れてるみたいなのでやめよう？私も行き詰まってるし。」
阿「……ごめん。」
今日何度目かの謝罪に気にしないで、なんて応えても曇った表情は変わらず。席を立った私にも気づいていないのか手元をじっと見つめる亮平くんは動かない。
「亮平くん、もしかして最近体調悪いですか？」
肩に触れてそう尋ねても俯いたままの彼はふるふると首を振るだけ。どうしたものかと悩んでいると不意にこちらを向いた亮平くんがぽつりと呟いた。
阿「Aはさ、…ユニット俺とじゃなくて佐久間の方がよかった…？」
不安げに揺れるその瞳を逸らす事はできない。
ここで佐久間さんの名前が出てきたことも不思議で言葉に詰まる私に彼は続ける。
阿「きっと佐久間との方がAももっと曲のイメージとか沸くと思うし、俺じゃAの理想には遠いかなって。今からでも佐久間に…。」
なんて彼らしくない言葉が次々に出てきてこちらまで不安になってしまう。亮平くんはきっと私の曲が上手く作れてないのは自分にも原因があるんじゃないかと気に病んでしまってのかもしれない。
そんな事あるわけない、彼にふさわしい曲を作れていないただの私の力不足なのに。
それでも私は亮平くんの事を想って曲を作るのを諦めたくなくて。
「それは嫌です。私は亮平くんとやりたい。というより亮平くんとがいい。」
亮平くんの肩に手を置き半ば無理やりこちらに向けさせ、彼の目をしっかりと見て言い放つ。じっと見つめれば揺らぐ彼の瞳にゆっくりと私が映る。
阿「ほんと…？俺でいい？」
はい、と大きく頷けば少し潤んだ様に見えた彼の瞳。
その瞳を見つめ返そうとしたら急に視界が遮られる感覚に驚くのとほぼ同時。
ふわりと香る優しい匂いと温かくて心地いい温度。
阿「ごめん。今すごくだらしない顔してるからちょっとだけこうさせて。」
ぎゅっと背中に回される腕が思いの外強くて私も彼の背中にそっと腕を回した。
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ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
