episode.19 ページ21
阿部side.
不意に握られた両手にドキドキが抑えられず、言葉を失った。イタズラっぽく笑う彼女があまりにも可愛くてやっぱり急いでここに来て正解だったなんて心の中でガッツポーズ。
前に俺のファンだとメッセージを送ってきたことも詳しく聞きたいけどそんなことは後回し。
さっきとは打って変わって大人しくなってしまった彼女に何か話せることはないかと話題を探すと不意にテーブルの脇に置いてある物が視界に入る。
「楽譜…？」
五線譜に散りばめられた音符たち。どれも手書きで恐らく神崎さんが書いた物だろう。
ハッとした彼女が慌てて裏返したのが肯定の合図。
貴「あ、いやこれは私の趣味で…。オフの日はここでよく息抜きに作曲とかしてまして。」
とても見せられた物ではありませんよ、なんて言うけど彼女が作る曲にとてつもなく興味をそそられる。
直接見たいとは言わないけれど気になってチラチラとそれに目がいってしまい、その都度神崎さんがちょっとムッとするのもまた可愛い。
「ねぇほんとにダメ？」
ちょっとだけ、なんてダメ押ししてみる。
この喫茶店で彼女の曲が生まれているのを知れただけでも嬉しいのに今日の俺はちょっと欲張りだ。
貴「これはプライベートな物で誰にも見せたことなくて……恥ずかしいから本当にちょっとだけですよ。」
渋々差し出される楽譜の束。
4、5曲程あるそれには意味深なアルファベットがふってあり、どれも書き途中の物だが音を辿って読んでみる。その間黙々とガトーショコラへとフォークを進める神崎さん。
最後の曲を手に取って指でなぞる。
他のどの曲よりも最後に読んだ1曲が印象的だった。自分の好みだったのもあるけれど、それ以前に思ったことは。
(昔路上で聴いた曲に似てる様な気がする…。)
もう数十年前のことだから記憶も朧げだがそんな気がしてならなかった。手持ち無沙汰の彼女がこちらを見つめる視線に気づいて慌てて楽譜を返す。
「やっぱりすごいね神崎さん。どの曲もいいなって思ったけどこの"R.A"って書いてあるやつ。俺1番好きかも。」
貴「本当ですかっ！？実はこれ、あべさ……、ぁ…ぃやその…なんでも、ない………です…。」
ぱぁっと花が咲いた様に笑った神崎さんが急に真っ赤になって黙り込む。今日の神崎さんは表情が豊かで新鮮だ。
「神崎さん俺の事可愛いって言うけど、俺からしたら神崎さんの方が可愛いよ？」
更に顔を赤くした彼女にやっぱり可愛いな、なんて口元を緩ませた。
ちょっとした小話。 ＊読まなくても大丈夫です→←episode.18
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ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
