episode.10 ページ12
貴女side.
阿「この前はありがとね。佐久間すっごく喜んでた、また会いたいって。」
「私も楽しかったです、あれがきっかけで皆さんの曲最近よく聴いてるんですよ。また機会があればぜひご一緒させてください。」
阿「え、ほんとに？嬉しいなぁ。」
スタジオに向かう途中。阿部さんは嫌な顔もせず私に道を教えてくれて。
ひとつひとつの優しさにドキドキしてしまう。とっくに皆さんのファンになってしまったなんてもちろん言えずに曖昧な言葉で濁しつつ会話を続けた。
阿「神崎さんの言ってたスタジオってここ？」
彼と話す時間は楽しくてあっという間で、気づいた時にはお目当てのスタジオの前に着いてしまって少し残念とか思ったり。
「…！はい、ここです。ありがとうございます。」
そんな感情を掻き消すように精一杯笑って見せれば、何故だか浮かない顔をした阿部さんの瞳が揺れる。
阿「また緊張してるの？じゃあはい、頑張れるおまじない。」
「ぁ…え、っと阿部さん…？」
ギュッとあの時と同じ様に両手を包まれて困惑する私とにこにこ笑う彼。
じわりと頬が熱くなるのが自分でも分かるけど両手を塞がれている以上隠す術もない。温かい阿部さんの手を嫌でも意識してしまいファンとして、ではない感情を阿部さんに持っているような気分になってしまい包まれた両手からそっと視線を逸らした。
阿「………なんだか照れちゃうね。」
なんて頭上から聞こえた声に小さく返事をする。
顔は見えないけどきっとあざとい顔してるんだろうな、とか変に冷静になっている自分の視界からゆっくりとその手が離れていくのが見えた。
頬の熱が冷めない私を見つめる阿部さんの瞳はいつもより真剣で。
阿「あのさ……」
彼の手がそっと頬に近づく気配。
ギュッと瞳を閉じた私の耳に届いた次の言葉は。
マ「Aー。やっときた、もう遅いわよ。」
離れたところから響くマネージャーの声に2人してビクリと肩を揺らし慌てて距離を取る。カシャンと何かが落ちる音と同時に阿部さんが動揺した様子で口を開いた。
阿「っ、あ…俺ももう行かなきゃ。じゃあ神崎さんまたね！」
ひらひらと手を振る阿部さんの背中へと咄嗟にお礼を伝えたものの、地面に落ちたボールペンに気づき声をかけようにも彼の姿はもう見当たらず。
(次もし会えたらどんな顔でこれを渡せばいいんだろう…。)
ギュッと握りしめた緑色のボールペンを次会うための口実にする為にそっと鞄の中にしまった。
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ぴの(プロフ) - 更新楽しみにしています。 (9月21日 22時) (
レス) id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - ぴのさん» ぴのさん、コメントありがとうございます…！ゆっくり、ゆっくりと阿部ちゃんと近づけたく思ってますので温かく見守って頂けますと幸いです。 (9月21日 22時) (レス) @page15 id: 0984604825 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - めちゃくちゃ、続ききになってます。 あべちゃんとヒロインの今後の関わりがたのしみです。 (9月21日 20時) (レス) @page14 id: a8ffbe2352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼 | 作成日時：2023年9月18日 22時
