【夢小説】白薔薇の妹【DIABOLIK LOVERS】 (ページ29)

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【二章　第十話】　儚き白薔薇の嘆き④ ページ29

『おかあさん......？だいじょうぶ？』

子どものように泣きじゃくる母にAは手を伸ばした。

クリスタ「私は大丈夫......大丈夫よ......ごめんなさい......ごめんなさい」

『おかあさん......だいじょうぶそうじゃない。ほら、いいこいいこ』

そういってAはクリスタの頭を撫でた。
まるで、先ほどあったことなんてなかったかのように接する少女に、
彼女はまた涙が溢れた。

自分が【してはいけないこと】をしたのを自覚しているようだった。
顔を上げ、Aの眼を見て言った。

クリスタ「A......ごめんね。こんなお母さんでごめんね......」

そういって自分の胸元へと抱き寄せた。
抱き寄せられ頭を撫でられているAの顔には笑みがあった。

クリスタ「......スバル」

不意に名前を呼ばれた少年は、咄嗟に反応することができなかった。
彼女は言葉を続けた。

クリスタ「スバル......お願いがあるの。......もしものとき......
　先程のように私があなたたちに危害を加えようとしたとき、

　 ――この【銀のナイフ】で私を刺してほしいのです。」

――何を言っているのか、よくわからない。
そのナイフで、かあさんを刺す？
何を言ってるの？

なんで？

ねぇなんでよ？

硬直したまま動けずにいると、
Aを抱きかかえ目の前で座った。
そして少年の手を取り、【銀のナイフ】を握らせた。

――お願い。スバル。

そういって抱き寄せ、おでこにキスを落とした。

思考が停止し状況が把握できないまま、
母は立ち上がり後ろでずっと眺めていた父に向き直った。

クリスタ「......よろしくお願いします」

子どもの自分たちには何を意味をするのかわからなかった。
でも......

――寂しそうな声だった。

とても。

父は少し微笑んで言った。

父「......それで、良いんだな」

母は無言で首を縦に振った。
寂しそう。だが、どこか決心した顔だった。

それを見届けてから、
父は自分たちの頭を撫でながら言った。

――少しだけ、おやすみ。

そこで、
記憶は途切れた――。