【二章 第四話】 元は人間 ページ16
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〜ルキside〜
南中していた太陽が傾き始めたころ。
木々たちの微かな歌声を聞きながら、本を読んでいた。
少し黄ばんだ革表紙。ページをめくるたび仄かに香る湿気の匂い。
少しだけ重く、一見魔術書のような本だ。
――Aがよく読んでいた本だ。
中身は筆記体で書かれたヴァンパイアの話だ。
――くだらない。
読むたびに思う。
何が【退治】だ。
ヴァンパイアだって【元は人間】だったはずだ。
平和を望んだだけの罪のない人間だったはずだ。
――なのになぜ殺しあう。
俺はここからの答えがわからない。
いつもいつも...
突然、『ガチャ』という音がした。
読み終わった本から顔を上げると、【イヴ】が立っていた。
少しばかり顔が暗い。
ルキ「どうした。何かあったか?」
イブを見ながら聞いてみた。
すると、言いにくいことなのだろうか。
口を小さく動かしながらつぶやいたのだった。
ユイ「あの...Aちゃんがその...」
ルキ「旅にでも出たか?」
話をかぶせるように言った。
どうやら合っていたらしい。
目と口を開けたまま動けずにいる。
ルキ「どうせ逆巻の奴らに会いに行ったんだろう。そう気にするな」
俺は本に目を落としながら言った。
ユイ「ぃ...いいんですか?引き止めなくても...」
ルキ「兄弟の再開を引き止める必要があるか?」
ユイ「で...でも...」
ルキ「気にするな。すぐに帰ってこなくても、いずれ帰ってくる」
そうだ。
帰ってくる。
あいつなりの【ケジメ】がついたら帰ってくる。
俺はそう信じている。
たとえ帰ってこなくても、逆巻の奴らに渡すつもりはない。
――捨てた【妹】を、返すわけがないだろ
俺は挑発的な笑みを浮かべ、天を仰いだ。
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*SSU*(SM) - 2度見しちゃいましたよ〜♪ (2020年4月25日 0時) (レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
SM - 最高〜〜! (2020年4月6日 19時) (レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
氷室ルミ - バンパイアではなくヴァンパイアです。 (2017年10月29日 22時) (レス) id: 08909c4050 (このIDを非表示/違反報告)
理子 - 坂巻になってますよ! (2017年8月5日 2時) (レス) id: b6c073acda (このIDを非表示/違反報告)
ルリア - 続きを期待してます。 (2017年2月11日 23時) (レス) id: 261f2ab2b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姪羅 | 作成日時:2016年10月15日 15時