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放課後、約束した駅前の喫茶店に行くために、
学校から駅までの道を2人で進む。
彼と歩く慣れない道も、彼と交わす何気ない会話も、
時々ぶつかる視線も、耳に響く彼の掠れた声も。
その全てが、私をドキドキさせるもので。
ゆっくり、私たちは時間と言う本を読む。
窮屈でも退屈でもない。時々やってくる沈黙も、
私にとっては気まずさ1つ感じなくて。
彼の柔らかい笑い声に私は底知れぬ安心を覚える。
紫「……Aちゃんって、モテるでしょ」
「………ぇ?」
彼が突然嘆いた言葉に驚きを隠すことは出来なくて。
思わず顔を上げて彼の綺麗な瞳を見据えるけど、
感情はこれっぽっちも伝わってこなくて。
「………、全然モテないよ、笑」
必死に絞り出した声。自分が思ったよりもはるかに
緊張した、情けない声。
これじゃ、匂わせてるみたいじゃん。
紫「嘘だ。笑」
小さく笑った彼の視線は、違和感を感じるほど私に
突き刺さっていて、思わずたじろぐ。
その瞬間、彼の大きな手が私の頭に添えられた。
「……っ……、」
状況把握など冷静に出来たもんじゃない。
全身が熱を帯びていく感覚が分かる。うるさいほどに
鳴り響く心臓が、私の気持ちを熱くさせる。
こんなの、おかしい。
ぶわっと赤くなる頬に気づかれるのが嫌で、
彼のじりじりとした視線を逸らし、そっと俯く。
紫「…………そういうとこ。笑」
熱を帯びている頭が解放されたのが分かると同時に、
歩き始める彼の背中が私の瞳に写った。
まだ冷めない余韻が残るまま、彼の背中を小走りで
追いかければ、ここ!と何事もなかったかのように
目的の喫茶店を指差す彼。
その笑顔はいつも彼が見せるものと同じで、
さっきのことは夢だったのかと錯覚するほど。
紫「はやく!入ろ!!」
「ぁ、うん、」
ぐいっと私の手を引いて進んでいく彼を、
眺めることしか出来ない私の胸はまたときめく。
彼の手に引かれるまま入った店内は予想以上に静かで
スイーツの甘い香りが漂う。
紫「……んー俺これにしよっかな。………、いやでも
こっちもうまそう……。あー、これもいいなぁ」
「………全部、美味しそうだよね」
紫「それな〜、全部食いたい………、、食っちゃう?」
「それは無理でしょ、笑」
紫「さすがにね笑」
彼の笑顔に、また私はトリコになってゆく。
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作者名:憂流。 | 作成日時:2024年1月1日 16時