愛をください。～another story (ページ36)

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帰りの車の中でも

じっと口を閉ざしたまま

Aは窓の外を眺めていた

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雅紀「A……どっか、行く？」

A「……え？」

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雅紀「さっき……ほら！どこか行きたいって言ってたから。」

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A「いい。もう……帰る。」

雅紀「………そう？行きたいとこあるんなら……。」

A「いいから……。」

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不機嫌そうに眉を寄せたAの表情が

流れるネオンと共に

ウィンドウに映り込む

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雅紀「可愛い人だね？櫻井さん。」

A「そんなこと……。」

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たぶん

他の男なら誰でも口にする言葉だろう

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わざとそんな言葉を口にして

また

ウィンドウに映り込んだAを

チラリと盗み見ていた

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雅紀「あ～～～、Aも充分に可愛いけどね？」

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むっとした表情をしたAに

冗談っぽく言った

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こんな事で

Aを試すようなことをして

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少しでもヤキモチを妬いてくれるなら

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なんて

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そんな事しか

出来ないなんて

子供みたいな考えに

バカらしいって思えるけれど

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尖らせた唇に

ほんの少し、嬉しさが込み上げるのも事実だった

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Aに妬かせたヤキモチは

意外にも俺の中で

安心を連れてきていたんだから

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