愛をください。3 (ページ7)

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86.空間ページ7

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着いたのは安いラブホテルなんかじゃなく

最近新しく出来たような

それなりのシティホテルで

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敷かれた絨毯が

ふわふわとヒールを捉えて

それだけで高級感さえ感じさせていた

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A「こんなとこ、いつも使ってるの？」

翔「まさか……。わざわざ誰にも会わなそうな場所、選んだだけだよ。」

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彼の背中に問いかけても

振り返ることもなく

そう答える

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ベルボーイに案内された部屋に

彼が入る

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ドアの前では

まだ躊躇している自分がいて

無意識に

その足を止めた

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翔「どうしたの？急に怖くなった？」

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立ち止まる私に

振り向いた彼がクスクスと笑う

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A「そんなんじゃ……、ない。」

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強がってなきゃ

自分を作ってなきゃ

全てに負ける気がした

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櫻井さんにも

そして美和にも

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重く閉められたドアが

二人きりの空間を

主張する

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目の前のソファに腰掛けた彼が

煙草を取り出して

それに火を点けた

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翔「おいでよ、A……。」

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呼ばれた名前に

思わず体を強ばらせた

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ろくに吸いもしていない煙草を

指先で揉み消して

その目をじっと私に向ける

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翔「A……でいいよね？俺のことも翔でいいから。
あ～～～間違っても最中に翔くん……なんて呼ばないでよ。」

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美和が

『翔くん！』

そう呼んでいたのが

かすかな記憶に蘇った

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脱いだジャケットを

無造作にソファに放って

ネクタイを緩める

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目の前には

立ち尽くす私を

痛いほどに突き刺しながら

見下ろす彼の視線があった

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