愛をください。2 (ページ12)

今日:3 hit、昨日:12 hit、合計:216,288 hit

52.皮肉な電話ページ12

.

A「もし……もし？」

.

.

.

『もしもし？Aさん？』

.

.

A「…………え？」

.

.

.

その声は女の声で

予想外の出来事に

戸惑う

.

.

美和『私、美和。さっきはちゃんとお話も出来なかったから。』

.

.

あぁ

そうか

.

.

冷静に考えれば分かることなのに

自分の保身ばかり気にして

.

雅紀に

気づかれないように言い訳ばかりを探して

.

.

A「どうしたの？電話なんて……。旦那様、何か言ってた？」

美和『ううん、懐かしいなぁって……思っただけ。』

A「そう、だね？10年ぶり……だね？」

.

.

話す私のすぐ隣に

ごろんと雅紀が寝転がる

.

足だけがベッドの外に投げ出されて

無意識にジーンズの太ももに手を置いた

.

.

美和『私ね、Aさんに会えて嬉しいなって思ってて。』

A「嬉しい？」

美和『うん。学生の頃はね、Aさんみたいになりたいって……ずっと追いかけてたの！』

A「お世辞？」

美和『違うよ！それでね、ずっとダイエットも頑張って、眼鏡もやめて。
ハタチ過ぎてから初めて彼氏ができたの！』

A「……そう。」

.

美和『全部ね、Aさんみたいになりたいって目標があったからなの。』

.

A「随分、変わったものね……美和は。」

.

.

そう

見た目も

そして、雰囲気も

.

もっと

陰湿な感じの子だったのに

.

綺麗になった自信が、あなたをそうさせたのだろうけど

.

.

美和『Aさん、全然変わってなかったから！』

.

.

皮肉だと思った

.

私みたいになりたい

.

.

そんな想いが美和を変えていたなんて

.

.

それも、整形手術までして

.

.

.

美和『じゃあ、またね？今度はAさんの旦那様にも……会ってみたいな。』

.

.

美和の勝ち誇った顔が

目に見えるようだった

.

.

イヤミの電話としか思えない

.

.

切った電話をベッドの上に放り投げて

ぎゅっとシーツを握りしめた

.