愛をください。 (ページ32)

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32.ぎこちなさページ32

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週末

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薫と出かけると偽って

あの人と会う

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A「夕方には、帰ると思うから。」

雅紀「分かった、俺も……そのへんブラブラしてっかな？」

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玄関先まで見送ってくれた雅紀に

「じゃあね？」って、笑って手を振った

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どこにも

不審な態度なんて無かったはず

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雅紀の誘いを断って

他の男と会うなんて知ったら

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妬いて、怒ってくれるのかな？

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そんな想いも

どこかにあるけれど

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怒ってくれる雅紀を見たい反面

揉め事に成りうる小さな種は

最初から隠しておいた方がいい

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待ち合わせたカフェに入ると

入り口近くに彼を見つけた

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今日はスーツではなく

カジュアルな服装

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出会った白いワイシャツの印象が

一変する

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A「こんにちは。」

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そう声をかけると

指先の煙草を揉み消して

爽やかな笑顔を私に向けた

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翔「こんにちは、Aさん。休日にわざわざすみません。」

A「……いえ、私の方こそ申し訳ないです。」

翔「汚したのは僕ですから！」

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あの日、ぶつかったのは

前を注意してなかったのは

お互い様なのに

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彼は、そんなことを一言も言わない

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翔「すぐ、出ますか？お昼、食べましたか？時間あるんでしたら、なにか注文しますか？」

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テーブルに備わるメニューを手にしたけど

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A「あのっ！食べてきましたから、大丈夫です。」

翔「そう？じゃあ、コーヒーでも……。」

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A「……いただき、ます。」

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まるで、カップルの初めてのデート

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『好き』の感情は

ここには無いけれど

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お互いぎこちないのは

それに似ていると思った

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