愛をください。 (ページ30)

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30.女の武器ページ30

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赤い顔をして

ソファの上でウトウトとし始めた雅紀の横で

静かにその寝顔を眺めていた

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付き合い始めてしばらくは

ベッドの上で眠る雅紀を

ずっと眺めていた

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ほんのわずかな二人の時間

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彼女の元へ返したくなくて

自分のものだけにしておきたくて

わがままも

言っていた気がする

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『彼女がいてもいいよ？』

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そう言って

自分で始めた関係だったのに

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長い前髪を寄せると

ピクリと眉が動いて

ゆっくりと目を開けた

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掴まれた手首と

引き寄せられた体

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雅紀「A……。」

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雅紀の体が

簡単に私の体を覆う

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A「どう……したの？」

雅紀「どうって、なにが？昨日はよかったのに、今日はダメなの？」

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A「そうじゃなくて。」

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雅紀「ベッドの上じゃなきゃ……嫌？」

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A「そんなことじゃなくて……。」

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雅紀から、私を求めてくること自体に

戸惑う自分がそこにいた

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男だから？

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女とは違うから？

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気持ちなんて無くても

たぶん、誰でも抱ける

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でも

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それでもいいって思ってた

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気持ちを繋ぎ止めるためなら

欲しかった雅紀を手に入れるためなら

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女の武器さえ、簡単に使うのも

惜しくないって思ってた

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だって

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私たちの

ハジマリがそうだったから

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そして

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今も、そんな気持ちが私の中のどこかにある

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雅紀の気持ちが

私に向いてくれるなら……

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惜しいものなんて

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何もない

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