愛をください。 (ページ11)

今日:24 hit、昨日:12 hit、合計:343,903 hit

11.薄靄ページ11

.

.

.

目を開けると

ぼんやりとそこには光が広がって

その中にひとつ

黒い人影が目に映る

.

A「………さき？」

.

.

絞り出してやっと出た声で

その名前を呼ぶ

.

.

男「あ、良かった！目、覚めた？」

.

.

でも、その声は

雅紀のものではなくて

徐々に視界が開けてくると

目の前には知らない男の顔があった

.

.

A「誰……っ！？」

.

.

慌てて体を起こそうとしても

頭の中がぐるぐると回る

.

ふらつく体を支えきれず

その男の腕の中へと収まっていた

.

.

あぁ

.

そうだ

.

.

.

薫とランチに出た後

お店で……体調が悪くて……

この人とぶつかって

.

.

その後……？

.

.

男「大丈夫？まだ、休んでた方がいいんじゃない？」

A「だいじょぶ……です。ただの貧血ですから……。」

男「そう？」

.

.

抱きかかえるように支えられた男の腕から

自分の体を引き離して

近くにあったイスへと座り直した

.

.

男「まだ……真っ青ですよ？」

.

.

男は

私に一つ

ミネラルウォーターを差し出した

.

.

A「……あり、がとう……ございます。」

.

.

まともに男の顔も見れないまま

そのペットボトルを一口飲み込んだ

.

.

無言の空間

.

.

ここが何処なのかよく分かりもしないまま

.

知らない男と二人きり

.