130話 ページ30
裕翔side
待ちに待った金曜日
結局、慧は昨日になっても行き先を教えてくれなかった
侑李に家から持ってきてもらった服に着替えて、久しぶりに髪をセットする
病院にいると好きな時間にお風呂には入れないから、ワックスなんて付けられない
朝起きて軽く手櫛を通す程度
久しぶりに開けたワックスは、蓋の周りが乾燥してポロポロしていた
中「……よし、」
鏡に向かって頭を左右に振って髪の毛を確認
うん、我ながらいい感じ
こんなことになる前は、毎日こうやって髪をセットして、自分に似合う服を着て、友達と一緒に遊んでいたっけ
今考えてみれば、事故の前は友達と遊びに行くことで侑李に留守を任せることもあった
足が動くうちに、自由に歩けるうちに、侑李のためにできることはもっとあったはずなのに
大「失礼しま〜す」
中「あ、はい」
カーテンの向こうから顔をのぞかせた大野先生
ふにゃりと微笑んでカーテンの向こうから車椅子を押してきた
大「外出の時はこっちを使ってください。いつも使ってるのは院内用なので」
中「はい」
大「横断歩道で止めるときは、必ず車道に対して横に向けてください」
中「はい、ありがとうございます」
大「それとこれは相葉先生からなんですが…。慧くんのこと、少し注意して見てあげてください」
言いにくそうに視線を落とした大野先生が、眉を寄せながらそう言った
注意してっていうのは、つまり、無理をさせないでってこと
中「…はい」
大「中島さんも、外は久しぶりだと思うので、くれぐれも無理はしないように」
中「はい」
大野先生が部屋から出て行ってしばらく待っていると、パタパタ小さい足音が聞こえてきた
慧の手術が終わって歩けるようになった頃くらいから、俺は慧の足音を聞き分けられるようになった
慧が相葉先生や宏太さんの足音を聞き分けられるのをすごいと思っていたけど、入院していると暇すぎて『誰か来ないか』って期待するから
だから分かるようになるのかもしれない
慧の足音は少し控えめ
体重が軽いからか歩き方なのか分からないけど、子供が歩くみたいな音がする
伊「裕翔〜……っ」
中「おはよう、慧」
カーテンを開け放った慧は、目を見開けたまま動かなくなった
中「…どうした？」
伊「あ、いや…裕翔がおしゃれしてるの、初めて見た」
中「あぁ、そうだね。どう？」
伊「んー…ふつう」
中「普通、か」
くるりと俺に背を向けて、カーテンの向こうに消えていった
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わらびもち(プロフ) - このお話がすきで、伊野尾さんが弱るのが好きすぎて、何回も読み直したりしていたのでとても更新嬉しいです！！これからも応援しています、、、！！ (2021年1月9日 17時) (
レス) id: 271deec22e (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 更新、すごく嬉しいです。 (2020年9月25日 16時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
あひる(プロフ) - colorfulさん» ありがとうございます！！更新しないままお待たせして本当にすみません…。まだまだ続く予定ですので、これからも楽しみにしていただけたら嬉しいです！ (2019年10月9日 22時) (レス) id: 859447dd16 (このIDを非表示/違反報告)
colorful(プロフ) - 本当にこのお話が好きすぎて更新ワクワクしながら待ってしまうし、沢山更新されてると嬉しすぎて何度も同じページ読んでしまって全然進みません笑 もはやいつまでもこのお話が終わらないで欲しいとも思っています笑 応援しています。これからも頑張ってください！！ (2019年10月7日 16時) (レス) id: a5293a7f37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あひる
| 作成日時：2019年8月13日 10時
