Our Infinity 〜3rd〜

125話 ページ25

宏太side



遅ぇな…


いや、わかるよ？

慧が裕翔のこと気に入ってるのはわかってるんだけど

たまには兄貴のことちょっとくらい優先してくれたって…


伊「宏太〜、お待たせ！」

薮「おう」

伊「待った？」

薮「あー……まあちょっとな。よし、じゃあ帰ろ」

伊「おー！」


勢いよく手を挙げて、楽しそうに受付前を突っ切る

自動扉を出て、久しぶりに病院の外に出た慧は、本当に気持ち良さそうに体を伸ばした


伊「ん〜っ！」

薮「あ、先に言っておくけど、日が落ちる前に帰るからな」

伊「分かってるって」


いつもだったら、うるさいなの一言くらい付いてくるけど、今日はご機嫌だから素直

俺に荷物を全て持たせて、自分はパーカーのポケットに入ったケータイだけ

身軽そうに手をブンブン大きく振りながら駐車場を横切って、車に乗り込んだ


俺たちの両親のお墓は、自宅から車で20分くらいのところにある

病院からの帰り道って訳じゃないけど、たまには顔を見せないと親不孝兄弟になってしまうから

慧も行きたいって言ってるし、お盆は気温が高すぎて慧の体の負担になるから行けない

途中の花屋で慧が花を選んで、少しだけ遠回りをしてお墓に着いた


伊「久しぶりに来た」

薮「俺も…半年ぶり、かな」

伊「怒られちゃうよ」


慧が選んだのは、仏花じゃなくて真っ白な百合

母さんが好きだった花で、毎年誕生日にお小遣いをかき集めて買った記憶がある

俺が墓石を流している間に、慧が花立てにその百合を刺す


雑草を引っこ抜いていた慧が、墓石を見上げてふと口を開いた


伊「あのね…、俺、大学やめようかと思って」

薮「……」

伊「休学してもお金かかるしさ、戻れるかどうかわかんないし」


俺に言ってるのか、それとも母さんたちに相談してるのか

父さんと母さんの保険金、俺の給料を合わせれば、慧を大学に通わせることくらいできる

治療費だって払えるし、治療のための休学ならその間の学費だって喜んで出す


薮「慧は慧のやりたいことをすればいい。俺には、慧がしたいことをさせてやる義務がある」

伊「………」

薮「父さんと母さんに約束したから。慧のことは俺に任せてって。だから変な遠慮はするなよ。俺が、2人に叱られる」

伊「……うん」

薮「覚えてないかもしれないけど、母さんは怒ると怖いから」

伊「覚えてるよ」

薮「怒られるのはごめんだからな」

伊「うん…、わかった」


慧の隣にしゃがんで、一緒に墓石を見上げた

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