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120話 ページ20

慧side



トク、トク、トク、トク、


一定のリズムで小さく鳴る俺の心臓

そっか

不整脈がないって、こんな感じだったっけ


本当はもっと早い段階で手術を受ければよかったんだって

QOL、生活の質が上がるから

でも慧はビビリだからな、って、相葉先生は笑ってた

もっと前に、もっと心臓が強かった時に手術していれば、もう少しだけ何かできたかな


裕翔の手の中に包まれているのと反対の手で、病院から借りた前開きの病衣の上から胸元に手を当てる

トク、トク、トク、

こんなに普通に動いてくれると、治ったんじゃないかって勘違いしちゃうよ


中「…慧?どうしたの、気持ち悪い?痛いの?」

薮「どうかしたか?」


裕翔の声に、少し離れて椅子に座っていた宏太と光が同時に立ち上がる

心配そうに俺を覗き込む顔、なんだか似てる


伊「…んーん、」

八「大丈夫…?」

伊「……うごいてるなぁ、って…」

中「……動いてるよ、ちゃんと」

伊「ペースメーカーって、すごいねぇ…」

薮「そうだな」

伊「…なんか、なおったみたいな気がしちゃう……、ちがうのにね…」


宏太の顔、ちょっとだけ引きつった

困るよね

だって病気そのものは少しも治ってないんだもん


手術の前、念を押すみたいに相葉先生に何回も言われた

不整脈がなくなるだけで、俺の心臓がいつ発作を起こしても可笑しくないことに変わりはないこと

体が楽になる分、好きに動けないことが精神的にキツく感じるかもしれないこと


伊「…でも……手術、してよかった…。気持ち悪くないの…。こーた、ありがと…」

薮「俺はなにもしてねぇよ」


宏太のスネ齧りながら生きてるけど、俺だってもう大人の部類

手術が安くないことも、我が家の家計に余裕なんてないことも、俺の治療費が支出の大半を占めていることも、全部分かってる

なにもしてないなんて、嘘ばっか


伊「……なんか…つかれちゃった…」

八「少し寝たら?」


窓の外はオレンジ色

宏太が言うには、最近少しあったかくなってきたんだって

日が落ちるのもゆっくりになったと思う

宏太と光もそろそろ帰るかな


伊「…そうしようかな……、2人も帰っていいよ…?」

薮「おう」

八「明日また来るから」

伊「ばいばい」

中「俺も戻るね。明日、起きたらすぐ来る」

伊「…まってる」


一緒に部屋を出て行く3人を視線で見送って、そっと目を閉じた

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わらびもち(プロフ) - このお話がすきで、伊野尾さんが弱るのが好きすぎて、何回も読み直したりしていたのでとても更新嬉しいです!!これからも応援しています、、、!! (2021年1月9日 17時) (レス) id: 271deec22e (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 更新、すごく嬉しいです。 (2020年9月25日 16時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
あひる(プロフ) - colorfulさん» ありがとうございます!!更新しないままお待たせして本当にすみません…。まだまだ続く予定ですので、これからも楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2019年10月9日 22時) (レス) id: 859447dd16 (このIDを非表示/違反報告)
colorful(プロフ) - 本当にこのお話が好きすぎて更新ワクワクしながら待ってしまうし、沢山更新されてると嬉しすぎて何度も同じページ読んでしまって全然進みません笑 もはやいつまでもこのお話が終わらないで欲しいとも思っています笑 応援しています。これからも頑張ってください!! (2019年10月7日 16時) (レス) id: a5293a7f37 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あひる | 作成日時:2019年8月13日 10時

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