第35話 決着 ページ37
ウル:「グオオオォォォォ……………!」
ウルノーガの身体はついに限界を越え、どんどん
霧のように消えていく。
ウルノーガは最期にとどめを刺した勇者…
シアンを睨みあげる。
そして何やら、心底可笑しそうに小さく喉で笑った。
ウル:「ク……ククク………」
「………何か私に言いたいことでも?」
そうシアンが問うと、ウルノーガは1度静かに目を伏せ、ゆっくりと妖しい色をたたえた双眸を
再びシアンに向ける。
ウル:「……時を遡ってきたのは…お前だけだと
思うなよ…………ぐふっ………。」
私が…時を遡ってきたのを気づいて…?
「……!」
ウルノーガは最期にそう言い残して、玉座の間を
はびこっていた闇のオーラと共に霧となって
消えた。
ようやく深い闇から視界の広がった玉座の間。
その玉座には長らくウルノーガに憑依されていたデルカダール王がおそらく座ったまま気を失っている。
デル:「……う…うぅ……」
マル:「…………!」
「!………マルティナ」
シアンはマルティナに向かって力強く頷いて見せる。それにマルティナも応えて、玉座に御座す父へと駆け寄った。
マル:「お父さま……お父さまっ!
どうか目を開けてください………!」
マルティナに優しく揺すられ、王はゆっくりと
瞳を開けて、意識を覚醒させていく。
そして、心配そうに自分を見つめる美しい
女武道家を見てすぐに幼き我が子の姿が重なった。
デル:「う……うぅ………………マルティナ…?
まさかそなた………マルティナ、なのか……?」
デルカダールはどこか疲れたような…どこか
不思議そうな面持ちで辺りを見渡す。
デル:「ずいぶん長い夢を見ていたようだ………。
ユグノア王国が魔物たちに襲われてから…
わしはいったい…何を……………?」
「……ご無事で何よりです、デルカダール王」
デルカダール王はこちらに近寄り、優しい微笑みをたたえながらそう言った1人の少女を見上げた。
艶やかな亜麻色の髪に色素の薄い碧眼と肌。
目元は長らくの親交国であるユグノアの騎士であり国王である彼と同じ強い光をたたえている。
何よりも左手の手の甲に光り輝く勇者の紋章。
彼女は…間違いない。
ユグノア国王アーウィンと王妃エレノアの子…
命の大樹より愛されし、勇者。
デル:「おぉ…!…それは勇者の紋章…。
あの時の赤子が…なんと逞しく、美しく成長した
ことよ……!」
「…ようやく王に見えることができ、とても嬉しく思います」
シアンは柔らかに笑んだ。
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汐乃(プロフ) - ルビスさん» ありがとうございます!少し更新が遅めになりますが…頑張ります! (2017年9月5日 1時) (レス) id: 606c0a317c (このIDを非表示/違反報告)
ルビス(プロフ) - シナリオ、キャラクターにとても好感が持てました続きを毎日楽しみにしています!頑張って下さい!! (2017年9月4日 3時) (レス) id: 0261b564cd (このIDを非表示/違反報告)
汐乃(プロフ) - はちみつ恋風味さん» そのように評価していただきありがとうございます!このような駄文ですがそう言って貰えると、とても嬉しいです! (2017年8月30日 4時) (レス) id: 606c0a317c (このIDを非表示/違反報告)
はちみつ恋風味(プロフ) - 面白いです、原作に沿ってストーリーを進めている展開にドキドキしながら読ませていただいています。わたしもホメロス好きなので救っていただいて嬉しいです!更新待っています(*^_^*) (2017年8月29日 17時) (レス) id: 8fdbcc3360 (このIDを非表示/違反報告)
汐乃(プロフ) - ポテコさん» ご指摘ありがとうございます!すぐさま訂正させていただきました! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 606c0a317c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りまるま | 作成日時:2017年8月27日 10時