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Side BLACK
「……大丈夫か、」
「寝てる。まだしんどいみたい」
「………お前は」
「…はぁっ、……っ、わかんね、」
玄関で樹を迎え入れて、俺は座り込んだ。
「はぁっ、……はぁっ、……ﾊｧｯﾊｧｯ、はぁ、」
「北斗、北斗、落ち着こう。
ありがとな、遅くなってごめん」
樹が来てくれた安心感が涙になって、
胸につかえていた苦しさが全身を伝って溢れだす。
「……はぁっ、…しんたろ、辛そうで……ﾊｧｯ」
「うん、……」
「はぁっ、……ﾊｧｯ、」
「……ありがと、だあくん。今日もういいよ。
ほんと助かったわ」
樹がそう顔を上げてようやく状況を思い出す。
「ふぅ、…はぁ、………はぁ、っ、」
おちつ、かなきゃ。
「……そうそう。ゆっくりな。
お前まで倒れたらあいつ心配するぞ」
ぽろっと、溢れた涙で樹の優しい顔が歪む。
「はぁぁ、……はぁ、」
「……風呂入ってないままだろお前。
手先、めっちゃ冷たいし、体冷えまくってる」
ゆっくりゆっくり手を擦ってくれる樹。
ようやく空気が肺に入ってくるような気がした。
「あいつ、……ふぅ、………
ちゃんと、薬飲んでた、…偉かった」
「そっか、……
まぁ、病院行けなかったけどな、笑」
「はぁっ、……たしかに、笑」
「……大丈夫か」
「だいじょぶ」
よろけながら二人で立ち上がる。
「…もしも、こうやって、もっと早く助けてやれてたら、何か違ったのかな。」
樹は少し苦笑いをして、俺の手を離す。
「今日俺の仕事が早く終わってたら、俺が北斗と同じように取り乱してたかもしれないし」
そんなことない、とは言い切れなくて。
俺は涙を拭った。
「……ゆっくり歩いてこうよ、
ずっと走ってちゃ息切れすんだろ、俺達」
慈悲に満ちた目を末っ子に向けた樹はその頭を撫でていた。
「……じゅり、来てくれてありがと」
「んだよ、起きてたのかよ、笑」
「…ねぇ、見て。月がすごいきれいなの」
いつの間に、慎太郎はカーテンを開けていたんだろう。
「……ベランダ行くか？」
「んーん。ここでいい」
そんな二人の会話をずっと見ていたかった。
ずっとずっと、明日も明後日も、
例え何年たっても。
Fin
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2021年2月8日 14時
