BLACK TrackONE【4】 (ページ38)

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Track 48【聴覚言語障害】ページ38

Side PINK

「～～♪」

イヤホンで鼻歌を歌いながら歩く。
この時間が好きだから、俺は最寄り駅からはいつも歩いて学校に向かう。

というのも最寄り駅からものすごく学校が遠くて、しかも坂の上で。

大抵の生徒たちは、シャトルバスに乗って坂を上がる。

母ちゃんには「そのために高い学費払ってるんだから利用しなさいよ」っていつも小言言われるんだけど。

「あ、…」

俺の前には小学校からの幼馴染北斗がいた。
そして、隣にはジェシーも。
二人は家が近いから同じ路線で来るんだよね。
ちなみに俺はバスで駅まで来たんだけど。

「ジェシー！北斗！おはよーっ」

少し大きめの声で、声をかける。
その声でジェシーは振り返って、止まってくれた。

頭に？マークのついた北斗はまずジェシーを見たあと、ジェシーが俺を指差したので、ようやく俺の存在に気付いたらしい。

「おはよ！二人とも英語の課題やった？」

「おあよぉ、
いちげんなおぃ、ひゃってなぃお？
(おはよう。１限なのにやってないの？)」

北斗は苦笑いしながら応えた。

「間違えてノート置いて帰っちゃって、やる気なくしちゃったから、笑」

「ahaha 別のノートに書けばいいじゃん！笑」

ジェシーの笑い声に頷いて、北斗も声を出さず笑っている。

「だから後で見せてよ、ジェシー」

「絶対に北斗のほうがあってるよ、笑」

そんな平穏な朝。

ちょっと違うのは、

「なにぃ？」

「北斗から見せてもらえって。
ジェシー、綴りは自信ないんだって、笑」

時折、同じことを繰り返してお話する必要があることぐらい。

北斗は小学校の2年生のとき、高熱を出して聴覚を8割ぐらい失ってしまった。

今では補聴器もつけているし、唇を読んで大体の話は分かるんだけど、ちょうど今、俺達の横をシャトルバスが走ったから。
周りの音で聞こえなかったみたい。

人混みだと聞こえづらいことがあるから、人が密集するバスより歩きを選んでるんだよね。
ジェシーもそれに毎日付き合ってあげてるから、北斗はジェシー大好きなの。笑
…俺のことはそんなに好きじゃないかもしれないけど、何故か殆ど毎年同じクラスになるから…

北斗には自分の声が聞こえない分、発音が少し分かりにくいときもあるけど。
でも、実際はお喋りも大好きなんだよね、笑

英語のリスニングが出来なくたって成績優秀だし、本当に凄いと思う。
沢山辛いこともあったと思うけど、これが俺達にとっての当然の日常。