BLACK TrackONE【4】 (ページ26)

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Track 44【学習障害】ページ26

Side GREEN

「今日からお世話になります！
モリモトシンタローです！えっと字は…」

まだ出来上がっていないらしい出勤ホワイトボードのネームマグネットの代わりに、
黒いペンで『森本慎太郎』と書き加える。

一つ上の段は『松村北斗』さんか。
一番近い上司かな？

「最近の若者にしたら元気がいいね、笑
北斗なんかとは大違い！笑」

ケラケラ笑うのはここの一番偉い人。
小さいとはいえこの年齢で会社を引き継いだ社長。
高地優吾さん。…と、言っても、俺の兄貴の友達だからちょっと変な感じ。
社会人になるまで「おい、こーち！」とか言ってたし…

それはさておき、本題の北斗さんは
(首から社員証をかけているから分かった)
俺の書いた字を見向きもせず、
少しペコリとしただけで、仕事に戻った。

「素っ気ないな。
悪いやつじゃないから優しくしてやってね、笑
こっちは田中樹。分からないことは樹に聞いて」

「よろしくな」

高地が北斗さんから視線を移し、ダークブルーの髪色にピアスの人を紹介してくれる。
出された右手に慌てて、俺も右手を出した。
暖かい。見た目より優しい人なのかもしれない。
……てかこの会社、誰一人スーツ着てなくて、リクルートスーツの俺、浮いてるじゃん…

「ジュリ、昨日の報告書出てないよ」

「えっ、ごめん！忘れてた！
慎、ちょっと待ってて。
あ、コーヒーとか勝手に飲んでいいから。あっち！」

北斗さんに言われた樹さんは慌ててデスクに戻ってパソコンをカチャカチャ鳴らす。
喋り口調からして二人は同期なのかな。
それより、“慎”だって。嬉しい！！

荷物をおいて、指さされた方向にあったコーヒーメーカーに向かう。

アメリカン…ブレンド…カフェラテ…など数種類のドリンクがあり、加えて砂糖やミルクの多め少なめが五段階も選べるらしい立派なコーヒーメーカー。

「皆さん、飲まれますか？俺いれますよ」

「あ、いいよ。俺がいつもやるから」

「それは北斗さんが今まで後輩だったからでしょう？今日からは俺がやります」

北斗は最初驚いたみたいだったけど、
樹さんに視線をやって「お願いしたら？」と言われると頷いて、こっちに来てくれた。

「えっと、…あぁ、じゃあ…ありがとう。
社長は黄色、ジュリは青、
…俺は黒のシールの、お願いします。」

「なるほど！マグカップと同じ色か！
分かりやすくて良いですね」

よく見るとコーヒーメーカーのたくさんのボタンに3種類の色のシールが貼ってあった。