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Side BLUE
だけど俺たちは北斗のホントの苦しみを知らなかった。
「今は映画の役作りでスノーボードの練習をされてるんですよね？
撮影現場の様子はいかがですか？」
インタビュアーが北斗のソロでのインタビューを始めたタイミング。
カタリ、と音がなって、楽屋に戻ろうとしていた俺たちは一斉に振り返った。
「あっ、すみません…」
紙コップを落としてしまったらしい。
周囲のスタッフが慌てて床やテーブルを拭き、北斗は頭を下げた。
「っ、はぁ、…」
「大丈夫ですか？……火傷しちゃいました？」
真冬。
温かいお茶を用意してもらっていたから、北斗の微かな吐息にスタッフはそう尋ねる。
「ﾊｧｯ、いや、あの……ちょっと、ごめんなさい。
一度お手洗いに、」
歯切れの悪いままで顔を歪めて立ち上がった北斗。
「えっ、ちょ、北斗！」
慎太郎が真っ先に駆け出して、倒れかけた体を支えた。
「ﾊｧｯﾊｧｯ…っ、気持ち悪い」
口を押さえた北斗は苦しそうに肩で息をしていて、二人は床に座り込んでしまった。
皆も戸惑いつつ、袋を用意したり、背中を擦ったりして対処している。
その光景を見て、俺は医者の言葉を思い出していた。
薬が効いているというわけじゃないんだ。
きっと、映画の撮影、長野でのスノーボードのことを思い出したからパニックを起こした…
北斗にとっての、“特定のストレス環境”なんだ。
編集者の方々に頭を下げ、ソロカットは無しで全員のショットの掲載になった。
仕事を切り上げ、ロケ車で病院に急ぐものの、その頃には北斗も落ち着いて、ジェシーに体重をかけたまま目を閉じていた。
「…俺、この三日間、みんなと仕事して、すげえ楽しかった。」
そのまま口だけが開かれた。
「もう長野に帰りたくない。」
泊まりに行ったときすら聞けなかった、本音。
「北斗が帰る場所は、SixTONESだよ。
長野じゃない。
いつだって俺らはお前のことを待ってた」
高地の声が1番後ろの座席から聞こえた。
「高地、寂し過ぎて泣いてたよ、笑」
「いやいや、何平気で嘘はいてんだよ！笑」
きょもは高地にパシッと叩かれていたけど、ピンッと張り詰めた空気が笑い声に包まれた。
例え、今から医者に何を言われようと、
俺達は北斗の帰る場所で有り続ける。
「ん、…ぁりがと」
小さな小さな声を笑い声で聞こえなかったフリをして。
Fin
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年6月12日 16時
