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Side BLACK
診断は、骨に異常はないものの、靱帯損傷が酷く固定をしてもらって杖をついて帰ることに。
「…帰ってて って、言ったじゃん」
「帰ったよ、」
タクシーに乗って帰ろうと思ったら、診察室を出たところで高地と鉢合わせる。
そのタイミングでズリズリ、と肩にかけていたトートバックが滑り落ちそうになったのを腕で抱える。
「明日、大丈夫なの？」
「……痛み止め、貰う」
高地は心配そうに俺のカバンを持ってくれて、
俺は慣れない松葉杖で歩くことに集中した。
薬局で湿布と鎮痛剤を貰って外に出ると、
見慣れない車が止まっていた。
後部座席が勝手に開いて戸惑う。
「何やってんだよ、早く乗れ」
運転席から降りもせずに中から声をかけられて、
ここはまだ横浜だったことに気付く。
とはいえ、普通、ライブを終えたあとは疲労でいっぱいのはずなのに。
一度帰って、
また俺のところに自分の車で迎えに来たってこと？
「今日はうちに泊まれよ」
座席に座るとコンビニの袋に新品の下着が入っていた。
＿____
「それにしても、お前、病院行かなくていいの」
「リハーサルやってみて判断するから」
「無理だったら、ちゃんと言えよ」
なんて釘を刺されて迎えの車に乗り込む。
「ほんとに高地くんの家泊まってたんだ」
マネージャーさんに心底驚かれながら杖をつく。
「靴、どうしよっか。ていうか、歩けるの？
本番中は走って飛んで踊らなきゃいけないんだよ」
衣装さんや振付師さん、演出家さん、
複数名のスタッフさんが集まってきた。
俺は高地に杖を渡して、
恐る恐る体重をかけてみる。
ずくん。
「っ、……平気。…固定してるから、昨日より楽」
それは事実。
昨日よりは格段に痛みが少ない。
もちろん、朝食のあとに飲んだ鎮痛剤のおかげもあると思うけど。
……鎮痛剤の効果ってこんなものなの？
「嘘じゃん。痛いって顔に書いてある」
樹が口を挟んできて、口を一本に閉じる。
「……この衣装のときはこっちの靴にしようか」
いつもより大きめの靴を用意してもらうと、
かろうじてギプスの上から履くことができた。
但し、怪我をしていない方の足には少し大きく、布をつま先に詰めて誤魔化すことに。
「とりあえず、やってみる」
リハーサルでいくつか導線が短くなるように変更をすることに。
悔しいけど、出れなくなるよりマシ。
そう言い聞かせながら。
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年6月12日 16時
