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Side BLACK
「…ねえ、ほくちゃん、俺の____________」
「ひっ、！…あ。、…
えと、俺……ちょっとトイレに」
「Hehehe 分かった、笑
樹、俺の化粧水どこやったか知らない？」
俺は思わず口を押さえたままで楽屋を出た。
心臓がこれまでにないほど鼓動している。
走って走って、走って、トイレの個室のドアをガタン！と音を立てて閉めた。
………なんで俺、ジェシーを避けちゃったの？
体が震えて、頭が痛い。
いっそのこと、
止まらないぐらいの嘔吐とか、
歩けないぐらいの高熱とか、
意識を失うほどの貧血とか、
そんなことが体に起きたらいいのに。
いや、体調が悪いからってそんなことをしていい理由にはならないのに。
頭に浮かんだジェシーの顔は逆光で顔が見えない、光の中で眩しいぐらいに輝いていた。
俺とはまるで違う世界にいるみたいなそんな姿。
「今日調子悪そうだったけど、大丈夫？」
慎太郎に声をかけられて、「平気」とだけ答える。
ジェシーに話しかけられたときとは雲泥の差だと自分でも思った。
「ゆっくり休めよ」
「ありがと」
そう言ったはずなのに、
「ｽﾞｽﾞｯ…んー、なに？………へっくしゅっ！」
その夜は鼻詰まりや鼻水が酷くて、
風邪の引きはじめか、はたまたアレルギーか何かだろうかと頭を抱えていた。
…明日休みか…そわそわして、なんか嫌な感じ。
夢のこともあるし寝る気にはなれなくて、
スマホのメモを開いて、ウォーカーの執筆に手を付ける。
やっぱり休みなんてあってもろくなものじゃない気がする。
ブルーライトがしんどくて、頭が痛い。
思わず目を閉じると、ジェシーの顔が浮かんだ。
「くしゅんっ！……あー゛…もう！…ｽﾞﾋﾞｯ」
鬱陶しい中途半端な体調不良にイライラしながら、書こうとしていた文書を頭の中で想像する。
だめだ。何も考えられない。
市販薬あったっけ？……
ベッドをフラフラと降りると、少しぶるぶるっと体が震えて、これは風邪だと確信する。
「やっぱり、休み貰うと体調崩すな…」
独り言を言いながら、
『あなたの風邪はどこから？』
なんてキャッチフレーズの箱を見つけて、
ほっと息をつく間もなく水で流し込んだ。
「へっくしっ！……ティッシュティッシュ…」
鼻水を拭くと、遠くの鏡に写る顔は、
鼻先だけ赤くなってしまっていた。
視界に入る体温計。
脇に挟んで数秒。
「…ちゅーとはんぱぁ」
37.4℃。
俺はすぐに表示を消した。
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年6月12日 16時
