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____2009年
Side YELLOW
「北斗、今日は俺ん家泊まってく？」
「いや…
えっと、明日の朝、病院に行くことにしてて。」
「どうしたの？怪我でもした？」
静岡なまりの抜け切らない舌っ足らずな北斗は、「ちがぅ、」と首を横に振った。
「実は俺、小さい頃、心臓が悪かったんだ…
はぃどーみゃくべんきょーさくしょぅ、
っていう生まれつきの病気があって」
突然の告白に俺の思考は停止した。
「えっ、なに？」「どういう字、書くの？」
健人も風磨も動揺した声で同時に喋る。
『肺動脈弁狭窄症』と、
北斗は少クラの台本の裏表紙に書いた。
「心臓の病気って…大丈夫なの？」
「うん。
今は治療もして運動制限もないし、定期的な通院だけで問題ないし、ジャニーさんも知ってる。
明日は年1回のつーいんびってこと。
検査で悪化してないかどうか診てもらうの」
通院日…頭の中で聞いた言葉を漢字に変換する。
「…俺、このこと学校の友達にも言ってないから。3人にしか、この先も言うつもり無いから。
でも、大丈夫だから。心配しないでね」
犬歯を見せて笑う北斗を見ると、少し気持ちが落ち着いた。
「……もー、ほら、
そんなかおするから、いいたくなかったの！」
プクッと頬を膨らませた北斗。
「そ、そっか。
じゃあ、気をつけて帰れよ」
「また、明日な」
風磨も健人もその場は苦笑いで済ませた気がする。
あまりに遠い記憶。
そして幼かった俺達にはそれぐらいしかできなかったと思う。
_____________
それからどれぐらい経ってからだったろうか。
「……ふぅ、……はぁ、…」
「北斗、体調悪いの？酔ったとか？」
雑誌の撮影で地方の山奥に行っていた帰り、健人が声をかけた。
「……ねぇ、ほんとに大丈夫？」
「はぁっ、…ん、……くるし、……ハァッハァッ」
北斗は大きく深呼吸しながら、胸のあたりをおさえていた。
確かに朝早くからの撮影ではあったが、10代半ばの男子が息を切らすような内容ではなかった。
何せ、山の一本道。
挙句に大雨雷の悪天候。
太陽はとっくに沈んだ時間。
「うっ、はぁっ、はぁっはぁっ、」
「北斗！ゆっくり深呼吸して！」
「薬とか持ってないの！？」
健人が一生懸命、背中をさすって、
風磨は北斗のリュックをあさっていた。
「だ、大丈夫ですか！？」
運転手さんが振り返った
その次の瞬間。
ｷﾞｷｰｰｰｰｰｰｯと甲高い音がした。
俺達を乗せた車が横転した。
(続)
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作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年6月12日 16時
