___ ページ26
Side BLACK
見慣れた天井だった。
田舎にしては、大きな病院が近くにあってよかったなと思う。
まぁもちろん、都会に比べれば大きくなんてないんだろうけど。
「…北斗、良かった…分かる？」
大我が俺の手を包んで見下ろした。
少しだけ首を縦に動かし、瞬きをする。
見慣れた先生に挿管されていた管を外してもらう。苦しかったが、慣れている。
「………ﾊｧｯ…ごめ、…」
それでも熱はまだ高いのだろう。
絞り出すように兄貴の方へ視線を移す。
「…なんで早く言わねぇんだよ」
「ちょっと。兄貴がそんな言い方するからだよ」
大我は苦笑いしながら兄貴を見つめる。
「………お前まで、いなくなったら…
俺はどうしたらいいんだよっ」
兄貴は静かに1筋、涙を見せた。
こんなに、子供な俺、迷惑しかかけてないのに。
弱っちい体で、兄貴たちに何も返せてないのに。
だから早く、独り立ちしたくて。
何でも一人で出来るようになってきたのにさ。
「……俺だって。
北斗が苦しいとき、側にいられなくて寂しいよ」
大我も少し微笑んでまた優しく手を握ってくれた。
「ちょっと長めに有給貰ってんのよ。
だから…熱が下がったら、母ちゃんたちのとこ、三人で行こうな。だから早く治せよ」
大我に言われ、兄貴に頭を撫でられて、俺もまた泣いてしまっていた。
命日は明日。
大我が帰ってきた理由は分かっている。
兄弟三人、揃って墓参りに行くためだ。
それだけは欠かさないって決めてたのに。
無理して体調を悪化させた自分を反省した。
「……うるせぇ、分かってるっての」
だけどまだ、俺は子供のままでいたいのかもしれない。
涙を誤魔化すように、わざとらしく、あくびをしてみた。
Fin
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーちゃん(プロフ) - 燐さん» はじめまして。コメントありがとうございます！調べながらの浅はかな知識で、失礼がないか冷や冷やしていたので、そう言っていただけて少し安心しました（ ; ; ）こちらこそ、今後もよろしくお願いします！ (2020年5月18日 9時) (
レス) id: 2a9750e174 (このIDを非表示/違反報告)
燐(プロフ) - はじめまして。ナルコレプシーを患ってる者です。この病気を題材にしていただきありがとうございました。すごく共感して読むことができました。これからも楽しみにしています。 (2020年5月18日 1時) (レス) id: 89ee0a6eb4 (このIDを非表示/違反報告)
Reiyu(プロフ) - あーちゃんさん» あ、合ってたみたいですね……ε-(´∀｀;)ﾎｯ 良かったです。誤字なんか全然ある事ですので全然大丈夫ですよ！！これからも楽しみにしてます！！ (2020年4月26日 17時) (レス) id: c35ca9cb0a (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - Reiyuさん» ご愛読ありがとうございます！お恥ずかしい…完全なる誤字で、失礼しました！(T_T)ごめんなさい。ご指摘ありがとうございます！今後とも宜しくお願いします(^^) (2020年4月26日 17時) (レス) id: 2a9750e174 (このIDを非表示/違反報告)
Reiyu(プロフ) - 新作2つもおめでとうございます！今回のも楽しく読ませて頂きます。差し支えなければ1つ質問なのですが、題名が、TrackがTarckになっていたので……。敢えてそういう題名だったのなら本当に申し訳ないです。ただ少し気になったので質問させて頂きました。 (2020年4月26日 16時) (レス) id: c35ca9cb0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あーちゃん
| 作成日時：2020年4月26日 13時
