Rollin'【番外編9】

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Side PINK


黒田先生がいじっている点滴の音以外はシーンとしていて、風1つ感じない。
当たり前か。いつも北斗が使ってるVIPルームだ。
病院の中でも、ほんとに一部の人しか入れないって言ってたし。

「……一人の、病室は、……寂しいですね」

「…質問の返しになっていませんよ。
私は、京本さんに体調をたずねています。」

「ふっ、そうですね」

黒田先生らしい返事に笑ってしまう。
「平気です」と伝えたものの、黒田先生はチラリと俺を見下ろして、
「氷枕の新しいの、用意しますね」と、触ってもないのにもう冷たさが無いそれを指差した。

「何かあれば、すぐに言ってください。
あ。それから、北斗くんに直接じゃなくてもいいので連絡してください。
彼、心配して私に連絡してきましたよ」

「…ふふふ、ナースコールの使い方は分かってます。おやすみなさい」

黒田先生が少し微笑んで病室からいなくなった。


看護師の秋山くんが氷枕を変えてくれて、

『心配かけてごめん。早く治すよ』

そうスマホを打ち込もうとしたんだけど、

「はぁっ…ごめん、秋山くん…
グループラインにメッセージ入れてくれない？」

具合が悪いときってなんでこう、画面の光すらこんなに辛いだろうか。


「電話したらいいじゃないですか〜笑」

「俺、北斗のライン、追加してないから」

「えー、照れちゃって。笑」

「いや本当なんだよ」


何とか秋山くんがグループラインに送ってくれて、既読も5つ、すぐついたみたい。



その後は病室も真っ暗になって、ただ自分の荒い息遣いがやけに広い病室に響いた。


俺はいつも、母ちゃんが家にいる。
父ちゃんだってよっぽどじゃないと泊まりの仕事は無いし。
何より、俺の部屋にはあんずがいる。
一緒に寝てほのかな体温を感じて寝ることがほとんどだ。



「…北斗は…いつも、こんなに孤独なんだね…」

思わず独り言を話すけど、もちろん誰からも返事はない。
体が辛いってだけで人恋しいものなのに。

「……なんにも分かってやれてないな」

今日だって、どれだけ勇気をだして、黒田先生に連絡したんだろう。




明日は誰か来てくれるんだろうか。
でも俺、あんな態度取ったしな。


って、見舞いに来て欲しいのか俺は。
いやでもそんなだだっ広い部屋に一人でいたら、孤独死しそうだもん。

…孤独死って使い方違うか。

まぁとにかく、



「…寂しい」


そして、口にすると余計に虚しい。



「俺なんか、なんの支えにもなってやれてないのにね」

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