Rollin'【番外編10】

きみが在りたい場所 ページ29

※桃青黒のみ登場です

Side BLACK



ツアーのメイキングカメラの入った舞台裏。

午前のリハーサルを終えて、昼食を取っているときのことだった。


「元気？」

突然 声をかけられると「ひぇっ！？」と肩がびくついた。


「ぁ、……えっと、」

「元気じゃないんじゃない？…ん？あれ、合ってる？じゃないじゃないって無いんだっけ」


一人でよくわからないループに入ってしまった京本。
首を傾げたり、自分で自分に笑っている。



「……げんき、…ではない…こともないような、」


彼から視線を外してそんなふうに答える。
俺もよくわからないループに入りそうだ。




「まぁ、とにかくさ。
今日は俺達だけなんだし、無理に取り繕わなくていいんじゃない？
お客さんだって、北斗の体のことは知ってるんだし、変に気負いすぎるよりも、素直なままの北斗が見たいと思うし」


「…ぅん、そうだよね」


京本は「そうだよ」と少し笑ったあと、
いただきま〜す、なんて手を合わせた。




最近、俺は個人仕事が忙しくて、
久しぶりに皆と会ったのが地方への飛行機の中。

蓄積された疲労と、本番への緊張感からか、
自律神経が乱れまくっていた。

結局、ずっと貧血でぼーっとしていたし、
皆は夕飯を一緒にしたらしいが、俺は一人、
ホテルで横になっていた。

これくらいの体調不良はよくあることだが、
午前のリハーサルは、みんなが笑っているとき、
一人だけ笑えないでいた。



＿＿＿もし何かあったら、

余裕もない、体調も良くない、
そんな自分が不安すぎて、また具合が悪くなる。




「お、北斗。なにそれ」


「お前、人のスマホ覗き込むなよ、笑」


「見えたんだもん」


「…今度、旅行でもって話してて、ずっと行けてないんだ」


「えぇ、いいな〜俺も付いていこうかな」


「やめろよ、笑」


親友の誘いも、俺のせいで実現できていない。




樹は「いいじゃーん」なんて笑って、

それが、とてつもなく、心地よかった。




Fin




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いつもご愛読ありがとうございます。
世の中の状況が見えなくて先行きが不安な気持ちが
なんだかこのシーンを生み出したように思います。

皆様が安全に過ごせる日が早く来ますように。

2022/01/20
あーちゃん


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