皆殺しの辺境/rbr ページ3
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形骸化した恋愛というものに、色を落とすのは至難の業である。
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近頃開発されたという擬似的恋愛を味わえるという如何にも非生産的なプログラム。ヒト型をした鉄屑に埋め込まれたプログラムは、登録された人間と会話を幾度となく繰り返す事によりその人それぞれに合わせるように徐々に性格を変化させていく、というもの。確かに、ただただ好みの異性にアタックをしたところで、相手からNoが出る、なんて有りがちな玉砕が考えられない時点で、一つ利点とは言えよう。
然し、所詮は機械である。
そこになんの生産性もないのは確かに紛うこと無き事実であり、またそれを製作者側も頒布側も見て見ぬふりをしているのもまた、隠し用のない事実であった。結局は、心の慰め程度の、お遊びにしかなり得ない。
「なあ、A。今日はどこ行きたい？」
「そうだなあ、家でゆっくりしときたいかな」
「そう？せやったらなんかいれるわ。何飲みたい？」
「ん、私はいいよ。ロボロくん好きなもの飲んだら？」
そう？と柔らかな笑みを携えて、珈琲の入ったティーポットを傾ける。浮かべる笑みは正に慈愛に満ちた粘着質なもので、一種の狂気すら醸し出していた。しかし、それが意に問われないのは、相手がその思考力を要さない、創造物の一環であるから。アンドロイド、と名のつく製品ではあったが、アンドロイドとしては些か彼女は欠陥品である。何せ、自立した思考回路を伴わないのだから。
どちらかと言えばアンドロイドよりかはAIに近しい、プログラムされたままの機械的な笑みで、男が珈琲が並々注がれたカップに口をつけるのを眺めていた。ヒトの手によって構築された淡麗な容姿は、その穏やかな光景に華を添える。二人きりの、正に「絵に描いたような」空間。傍から見れば異端でしかないその光景に、アンドロイドの女はほくそ笑むのだ。
「今日も幸せだね、ロボロくん」
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作者名：トクメイキボウと莇野 x他1人 | 作成日時：2018年12月29日 1時
