70日目。 ページ42
それからはあっという間だった。気がついたら私と友人以外の全員が倒れていて、友人は私の後ろをじっと睨みつけていた。
ああ、後ろにイルミがいる。彼にしては珍しく足音を立てて、私の後ろに立った、その瞬間、縄が切られて、私の手は自由になった。
私は、なんでかイルミの方を見ることができなくて、そのまま、ありがとう、だけを絞りだした。
ぽん、と頭に手が置かれて、そのまま彼の気配が消えた。
目の前では、どうもゾルディック家の執事らしい黒服の人が、友人の拘束を解こうとしていた。
黒服の人が友人を家まで送ると言い出したので、私はようやく動くようになった体で親友の方へ駆け寄った。
彼女はどうやら、黒服の人の好意に甘えることにしたらしい。飛行船に乗って帰ると言いながら、こちらを見た。
そうして、微妙にご機嫌斜めな視線をこちらにくれた後、彼女は言った。
「何か言うことは?」
「巻き込んでごめん」
「それだけじゃないでしょ」
「……あんまり連絡できなくて、ごめん。ほんとに、ごめん」
「……落ち着いたらまた電話して」
「約束する」
「絶対ね」
彼女がふんっと微笑んだ。
どうやら許してくれたらしい。
意地っ張りで負けず嫌いで、意思の強い彼女は、こんな非日常の中でも彼女のままだ。
私は、それがとても嬉しかった。
♢
ホールを出ると、見慣れた黒髪がなびいていた。
もう、たまらなくなって思わず駆け寄ったけど、なんて言って良いかわからなくて、頭の中がゴチャゴチャして、とりあえずもう一度お礼を言った。
きてくれてありがとう。
イルミは溜息を一つだけついてから、いつもみたいになんてことのない顔で、あー、ただ働き。帰るよ。とだけ言って、そのまま私の手を掴んで歩きだした。
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バナナ - とっても最高でした!!有難うございます!!更新待ってます!! (2022年9月20日 2時) (レス) id: e7b90db1c1 (このIDを非表示/違反報告)
どらやき(プロフ) - 孤歌さん» ありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです……!これからもよろしくお願いします! (2018年7月3日 23時) (レス) id: a2747e3aed (このIDを非表示/違反報告)
どらやき(プロフ) - みーたんさん» コメントありがとうございます!ぜひ続編でもお付き合いいただけると嬉しいです! (2018年7月3日 23時) (レス) id: a2747e3aed (このIDを非表示/違反報告)
孤歌(プロフ) - 初めまして凄く面白いですね!更新待ってます(゜∇^d)!! (2018年7月1日 15時) (レス) id: 5a595ce298 (このIDを非表示/違反報告)
みーたん - 一言で言うとやばすぎますね (2018年6月24日 20時) (レス) id: 46104a2fe8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どらやき | 作成日時:2016年1月24日 18時