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「めめとさ、さっき何話してたん？」
雑誌の撮影の休憩中、康二くんのメイクをなおしていると躊躇いがちに発せられた言葉。
ちょっと不貞腐れたような顔が可愛い。
「いつ？」
って、そんなの分かってるけど。
何でもない風を装わせてほしい。
「おれが来る前、めめにメイクしとったやん」
「ああ、うん…特に何も話してないよ」
「嘘や」
そこで目を閉じてた康二くんがぱっと視線をわたしに向ける。
さっきの目黒くんとよりも近い距離で視線が絡んだ。
「A、顔真っ赤やった。めめになんか言われたんちゃう？」
「っ、」
よく、見てる、な。
っていうより、わたしが分かりやすいのか。
「………」
それでも何にも言えないでいると、康二くんがため息をつく。
「おれ、諦めてへんから」
なにを？
なんて、無粋なこと聞けない。
康二くんの気持ちに気付いてない、だなんて純情な女の振りできない。
「こ、」
「おれにしといたらええのに」
真っ直ぐに見つめられる瞳。
優しくて、オレンジがかった瞳がいつ見ても太陽のようだ。
曇りのないそれは、わたしの良心を揺さぶる。
「はよ、諦めて。そんでおれんとこきてや」
うん、って言えたらきっと楽になれる。
気持ちをストレートに表してくれる、優しい優しい康二くんの手をとれたならきっと楽になれる。
だけど、こんな会話をしていてもわたしの気持ちは目黒くんに向いている。
少し離れたところでメンバーと談笑している目黒くんにふと視線を向ける。
「っ、」
目が、合った。
すぐに逸らしてしまったけど、絶対に目黒くんはわたしを見ていた。
今までこんなことなかったのに。
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作者名：葵
| 作成日時：2023年10月16日 1時
