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「ねえ、見すぎ」
「えっ」
目を閉じていた目黒くんが、ぱっと目を開ける。
ちょうどファンデーションを塗ろうとしていたところだから、絡み合う視線が近すぎて眩暈がした。
「み、見ないとメイクできない」
「いや、今はそうだけどね？」
悪戯に目黒くんの口元が歪む。
「いつも見てるじゃん？」
って、小さな声で。
囁くように、誰にも聞こえないように、
そう言うから。
「顔真っ赤」
一瞬にして赤くなる頬。
耳まで熱い。
「っ、」
目黒くんの肌から手を離す。
少しだけ距離をとろうとした。
だけど、
「逃げない逃げない」
笑顔を崩さずに目黒くんがわたしの腕を掴むから離れられない。
どうしよう、どうしよう。
どうしたら、いいの。
「おっはよーさん！」
そんな時、わたしにとって救世主とも言えるべき声が控え室に響く。
「あーーっっ！！！なんでめめがAにメイクされてんねん！Aはおれ専属やろ！？」
康二くんの、その声。
それに目黒くんはぱっと腕を離す。
「ちぇっ残念」
って聞こえたのは気のせいだと思いたい。
熱くなった頬を冷ますように手をぱたぱたしていると康二くんが寄ってくる。
「ほら、Aはこっち。めめは濱田さんがしたってや」
結局いつもどおり。
わたしは康二くんを、その隣で濱田さんが目黒くんにメイクを再開した。
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作者名：葵
| 作成日時：2023年10月16日 1時
