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今日は雑誌の撮影が三本。
メンバーの現場入り予定時刻まではあと20分。
メイクチームの4人で準備をしながら談笑していると、一番に控え室に入ってきたのは、
「おはようございます…ってあれ、おれ一番?」
まさかの、目黒くん。
いつも到着ぎりぎりなのに。
昨日の今日で目黒くんが一番乗りなんて。
昨日の阿部ちゃんと照くんとの会話を思い出すと、もういてもたってもいられない。
見ちゃだめ。
また視線が痛いって思われちゃう。
わざとらしく視線を外してみるけど、不自然すぎて、一人の同僚にどうした?って顔で見られた。
控え室にはメイク4人に、目黒くんひとり。
何もなくても見ちゃうのに、この状況だと見ざるを得ない。
でも、ここから出ていくなんてそんな変なこともできるわけない。
「じゃあもうメイクしてもらおっかなー」
気まずい……。
でも、わたしは指名されない。
大丈夫。大丈夫。
目黒くんはいつも、一番年上でわたしたちメイクのリーダーである濱田さんが担当してる、
「Aちゃんでいい?」
のに!?
えっ!!?!?
声には出なかったけど、顔が素直にびっくりした表情になったのが自分でもわかった。
「何その顔、」
ふっ、て目黒くんが笑う。
「いっつも康二が独占してんじゃん?おれもたまにはAちゃんにしてもらいたいし。だめ?」
「だ、だめじゃ、ない」
声、上擦った。
これ絶対佐久間くんとかいたらからかわれるやつ。
でも、バカみたいに嬉しい。
嫌われてる、って勘違い、なのかな。
って少しだけ、ほんの少しだけ、思ってもいいかな。
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作者名:葵 | 作成日時:2023年10月16日 1時