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「ごめん、二人になれそうなとこ他に思い付かなくて」
「………… 」
「何か飲む?」
「…………いらない…」
手を離してくれたのは、リビングに着いてから。
優しい口調で話しかけてくれるのに、わたしはうまく笑えない。
目線も目黒くんには向けられない。
さっきまで繋がれていた手。
身体に比例して、男の人らしい大きな手。
わたしの手なんて、すっぽり包み込まれて。
離されてもなお、わたしの手は熱を持ったまま。
ちら、と部屋の中に視線をやる。
本当はずっとここに来たかった。
目黒くんのパーソナルスペースに足を踏み入れたかった。
近い存在だって、思いたくて。
だけどそれと同時にこんなとこ、来たくなかった。
目黒くんの彼女の痕跡が残るところになんて来たくなかった。
「っ、」
「何で泣くの…?」
ぐちゃぐちゃな感情が涙になってあふれでてくる。
すぐ泣くような面倒な女だなんて思われたくない。
泣いたらすべてが解決するだなんて思ってない。
だけど、溢れ出てくる涙を止める術をわたしは知らない。
溜め息のように、目黒くんが息をはく。
「ごめん、」
そう聞こえた刹那。
わたしは、目黒くんに抱き締められていた。
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作者名:葵 | 作成日時:2023年10月16日 1時