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「なんでって、だって見てたことキモいんでしょ、見すぎなのうざいんでしょ」
悪いのは自分なのに。
つい目黒くんを責めるような言い方をしてしまう。
目黒くんが何か言いたそうなのは分かってる。
分かってるけど、言葉を紡がれるのが怖くて。
どんな言葉を言われるかなんて分からないけど。
良いことを言われないのは確かだから。
「Aちゃん、」
「もう、やだ……」
しんどい、くるしい。
とうとう流れ出た涙に目黒くんが息を飲んだのがわかった。
目黒くんの顔は見れない。
でも、下を向くと繋がれた手が視界にはいって、もっと胸が苦しくなった。
「荷物、それだけ?」
「え?」
「行くよ」
しばらく黙っていた目黒くんはわたしの荷物を持つと、無理やり立たせる。
早く、って急かされて慌てて靴を履いた。
「ちょ、」
「後で話そ。とりあえず出よう」
その間も手は繋がれたまま。
足早にお店を出ようとする目黒くんに着いていくので精一杯。
もつれる足も、力強い腕でなかったことにされる。
「あれっめめ、もう帰る「ごめん阿部ちゃん、払っといて」
「えっ?Aちゃん!?」
途中でトイレから戻ってくる阿部ちゃんと擦れ違った。
だけど、足を止めない目黒くん。
そしてなすがままのわたし。
康二くんとは結局擦れ違うこともなくて。
お店を出て、
タクシーを捕まえて、
乗せられて。
「……っ、」
「おいで」
連れてこられたのは、目黒くんのマンション。
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作者名:葵 | 作成日時:2023年10月16日 1時