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「やだ」
意を決して言った言葉もたった二文字でなかったことにされる。
テーブルの下に置いていた手にからめられた目黒くんのそれがさらに強くからんできた。
さっきまで普通にご飯を楽しんでたのに、なんでいきなり手を握ってくるの。
ううん、聞きたいのは今の状況のことだけじゃない。
いつもは頼まないメイクまでわたしに頼んで。
わたしの視線が痛いと言っていたはずなのに、今日は目があうたびに微笑んで。
今日の目黒くんおかしいよ。
そう言いたいのに言えなくて。
視線を絡めることもできない臆病者。
「ねぇ、こっち向いてよ」
「…っ、」
その言葉に反射的に目黒くんの方を向く。
「やっとこっち見た。康二ばっか見すぎ」
「だ、って…正面、だし…目に入るだけ…」
「嘘。阿部ちゃんのことも見てたじゃん？おれのこと、盗み見はするのにいざ隣に座ったら見てもくれないんだね？」
なんで、そんな意地悪な言い方するの。
なんで、そんな不貞腐れたような表情なの。
なんで、そんな、
男の目でわたしを見るの？
「彼女、いるくせに…」
「え？」
「見てたことは謝りますごめんなさい。だから離して、もう見ないから離して」
「いやいや、何でそうなんの？」
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作者名：葵
| 作成日時：2023年10月16日 1時
