きみいがい【橙・黒】 (ページ15)

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わたしが頼むビールにあわせて三人もおかわりの飲み物を頼んだ。
テーブルにはすでにたくさんの料理が乗っていたけど、康二くんがわたしの好きなものを一緒に頼んでくれる。

さりげない気遣いにありがとうっていうと照れたように微笑んだ。

よかった。
少しだけ機嫌なおってくれたかな。
やっぱり康二くんは笑顔の方がいい。

乾杯、ってグラスを合わせるとそこは楽しい食事の場に切り替わった。

いつものように会話して、
いつものように笑って、
いつものように、

「っ、」

「A？どうしたん？」

少しだけ身動ぎしたわたしに康二くんが声をかける。

「え？」

「いや、今、」

続きを言いたかったらしいけど、タイミングが悪いのかいいのか、康二くんの携帯が着信を知らせた。

「うわ、何やねんこんな時間に」

ちょっと実家からやからとってくるわ。
そう言って康二くんは席を立つ。

それに続いて阿部ちゃんも、じゃあおれもちょっとトイレ、なんて言うから目黒くんと二人になってしまった。

二人にしないで、なんて言えない。
行かないで、なんて言えない。

だけど、この状況でどうしたらいいのかわからない。

いつものように会話して、笑わなきゃ。
何でもないよってフリしなきゃ。

でも、これはいつものことじゃない。

「手、はな、して……」

紡いだ言葉は思ったよりも小さかった。

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