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「ちょっと、手…」
「ええやん、心配したお礼してや」
「意味わかんない」
そう言えば康二くんはにかって笑う。
こどもみたいなその表情にわたしも自然と笑顔になった。
「そうや！おれ、今日のスケジュール終わりやねんけど、Aは？」
「ちょっと事務所に戻らなきゃいけないかな…」
「その後は？暇やったら飯いこ」
「うん、いいよ」
先飲んどるし仕事終わったら連絡して、って康二くんが言ったと同時に控え室についた。
「手、離して？」
「嫌や 」
扉の前にたって促してもつーん、てそっぽを向く。
「もう着いたでしょ」
「ええやん、手繋いで入っても」
「だめだよ」
「何で？めめおるから？」
「っ、」
さっきまで、康二くんのおかげで気持ちもちょっと楽になってたのに、またその名前で苦しくなる。
それに気づいたのか康二くんがごめん、って手を離した。
「後からきてや」
そう言って康二くんは控え室へ入っていく。
ばたん、と閉まる扉を見つめる。
「っ、」
その隙間から、目黒くんが見えた。
その目は、確かにわたしを見ていた。
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作者名：葵
| 作成日時：2023年10月16日 1時
