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「見過ぎちゃう？」
声をかけられてふと我に帰る。
ぱっと横を見れば呆れた顔の康二くんがいた。
「別に、見てないし、」
「ふーん？」
誤魔化せてない誤魔化しをいつものようにすると、康二くんは素っ気ない返事をしてから椅子に座った。
「ほんま、何で彼女おるやつ好きになんの」
「……………」
呆れたような、憐れむような、そんな声。
それには、応えない。
正確には応えられない。
だって、それを口にしたところで想いを届けるわけじゃない。
彼にとっては迷惑なだけの想いを口に出せるわけがない。
「A、」
「………」
「もうやめとったらええのに」
「………わかってるよ。もう、目閉じて。、メイクできない」
鏡越しに康二くんの鋭くて、だけど優しい視線が飛んでくる。
それに耐えきれなくなってそう促した。
素直に目を閉じた康二くんに、ほっと息をつく。
そしていつも通りにメイクを始めた。
少し離れたところでは、
目黒くんが、彼女と電話をしていた。
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作者名：葵
| 作成日時：2023年10月16日 1時
