S・MISSION－1－ (ページ32)

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慎太郎side ページ32

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日本に来て2ヶ月ほど。

ほぼ毎日俺らと顔を合わし、部屋に閉じ込められた生活をしている彼女だ。

不自由なこの生活にストレスを感じないわけが無い。たまにワガママを言うけどそれを全て叶えているわけでもないし。

…それに彼女を襲ってくる奴もいるわけだ。

「あ、…いや、その」
『大丈夫だよ？』

俺の意図を理解したのか、してないのか。
ちょっと困ったように笑ったAは大丈夫とこちらを見る。

「フランスに帰りたいって思う？」
『…最初の2週間くらいはね、思ってた』

でも、今は全然だよ。とヒザにかけていたブランケットを肩に掛け直したA。

『ずっとホテルにいるし、景色は全然変わらないけど、一緒にいる人達が楽しいからね』

横目で俺をチラッと見たAは＂慎太郎達で良かったよ＂と照れくさそうに方をすくめた。

「なんか最近、素直だな」
『ねぇ、そんなに印象悪かったの？』

ごめんってば、と俺のイジりに目を細めた彼女。

『私ってそんなに人を簡単に信じるタイプじゃないからさ、最初は壁作りまくりなの』
「うん、そうだな」
『時間が経てば徐々にその壁は薄くなってくるんだけどね…でも北斗は1年かかった』
「え？まじ？」

初めて聞いたそのエピソードに心底驚いた。

北斗とは最初から打ち解けているようなイメージを持っていたから。

『北斗が私と一緒に仕事するようになったのって3年前ぐらいなんだけど、初対面の時はお互いバチバチ警戒してたな』
「北斗も人懐っこいタイプではないもんな」
『探り合いもあったし、私がこんな感じだから北斗もオープンになんでも言ってくるようになってやっと？信頼し合えるようになったけど』

＂人を信用するにはリスクがあるからね＂とさらっと言いのけたA。

やっぱりAは、昔にトラウマがあるんだなと思った。

そこに浮かび上がるのはカズさんも言っていた家族のこと。

「Aの親は今、何してんの？」

この際だから、ちょっと切り込んだことを聞いてみる。

すると彼女は何も気にした様子が無く、淡々と答えてくれた。

母親とは一緒にフランスにいってすぐ別の男性と家庭を築いた為Aとはほぼ連絡をとっていないらしい。

父親に関しては全くわからないと。

『私、家族がどういうものかわからない』

Aはいつか見た、儚い顔でそう言った。

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