慎太郎side ページ31
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夕方くらいだった。
カズさんからAの親について教えてもらったのは。
父親は戸籍から外されており、誰なのか不明。
母親は現在、フランスに住んでいるがAとはもう連絡をとっていないとか。
彼女の親は小さい頃に離婚しているため、それキッカケでフランスに移住したと考えていい、とカズさんが教えてくれた。
「そうですか…」
カ「もしかしたら、彼女は父親を探してるのかもな」
「…かもしれないっすね」
今の話を聞いて俺もカズさんも思うことは同じだった。
彼女が探しているのは父親だと。
小さい頃の記憶で止まってると言っていたし、彼女が言っていた話となんとなく辻褄が合う。
カ「彼女は大丈夫なのか？」
「まぁ、元気ではありますかね」
カ「本当は直接聞きたいが、あの事もあるし…まだ様子を見ておこう」
「了解です」
あの事、とはフレンチレストランの帰りであった事だ。
襲われそうになってからまだ1週間も経ってない。
思い出させるようなことはあまりしたくない、というカズさんなりの優しさだろう。
それは俺も賛成だ。
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夜、ご飯も食べ終えゆっくりしていた彼女に屋上に行けることを伝えると、嬉しそうに��早く行きたい��と声を上げた。
「今から行くか？」
『うん！』
ソファにいつも掛かっているブランケットを取り、
彼女と部屋を出る。
ジ「ん？どこ行くの？」
「あぁ、ちょっと屋上に」
『月、見てくる』
ジ「気をつけてね！」
『うん！』
「すぐ戻ってくる」
さっきホテルの人から教えてもらった屋上へ続く階段を上り、白い扉を開けると広々としたテラスのような屋上が現れる。
丁度、雲もなく綺麗に見えた月。
ゆっくり見れるようにベンチにAを座らせ、その上に持ってきたブランケットを足元に掛けた。
『……綺麗』
深呼吸するように息を吐いたAは空を見上げながら小さく呟く。
「これが見たかった？」
『うん』
��満月ってなんかパワー貰えない？��とソレから目を離さず言う彼女に��そうだな��と返す。
俺自身、そんなに月をちゃんと見ようと思ったことなかったけど、改めて見ると綺麗だよなと。
隣で月を見る彼女の横顔を見つめ、ふと思った。
「…A、しんどくないか？」
『え？』
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作者名：蝶-アゲハ-
| 作成日時：2022年3月1日 0時
