慎太郎side ページ23
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俺は引っ張られたそれを戻すように、ゆっくりとベッドのフチに腰掛ける。
「なにか飲むか？」
『ううん、いらない』
「…そっか」
俺とAの間に無音が広がる。
俺はどうしていいかわからず、ただAの横に座ってるだけだったけど、この気まずい空気を変えたのは彼女だった。
『慎太郎はなんでこの仕事しようと思ったの…？』
「俺？」
ベッドで上半身を起こし、こちらを見るAが真っ直ぐ俺を見つめ頷く。
「…全ての人を守りたいから」
俺は単純に、人を守りたかった。
だけど警察のSPだとそれが難しかった。
「元はSPに憧れて警察になったけど、俺の想像してた世界とはちょっと違ったんだよね」
上の人間のミスを俺らのせいにするし、対象は決まって政府の人間だけ。それも会食の送り迎えや、浮気の隠しの為に使われる。さらには事件のもみ消しや改ざんなんてのも。
綺麗な世界だと思い込んでたが、そこはかなり汚かった。
そのギャップに我慢できなくなって辞めたんだよな。
「だけど、俺はSPという仕事に誇りを持ってた。だから単純に人を守るだけの仕事をしようって思ってた時にカズさんが声をかけてくれて」
組織のしがらみに囚われず、頼まれたら誰でも守れるような仕事をしようって。
そんな時にカズさんが��新しい部隊に入ってくれないか��って誘ってくれたのが今の極秘部隊。
総理の要請で作られた部隊だから最初は嫌だった。
また政府のコマにされるのかって。
だけど、ここは違った。
「カズさんも元々俺らと同じSPだったし、警察の闇も全部知ってるからこそ、この組織は特別なものにするんだって言ったんだよね」
ここなら俺のしたい事ができるって思って入ったんだったっけ。
「だから俺はこの仕事を続けてる。」
……少し、長くなっちゃったな。
暫く俺がずっと喋ってたせいで寝たかも、と思って横を向けばAはしっかりと俺を見ていた。
『……素敵だね』
ゆっくりと瞬きをしながらAは優しく言う。
フワリと微笑む彼女に少し、ドキリと胸が鳴ったのは気のせいか。
「…Aは？なんでモデルになったの？」
『んー、私は……』
Aは俺から目線を外し、天井を見上げて考える。
少し照れくさく笑ったあと、自身のベッドを見つめて小さく言った。
『孤独になりたくないから』
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作者名：蝶-アゲハ-
| 作成日時：2022年3月1日 0時
