慎太郎side ページ14
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いきなりの密閉空間。
試着室だから多少広さはあるといえど、小さなスペースなわけで。
『なに？狭いって』
「スタッフにAってバレたかもしれない」
『それが何よ』
「何って、お前さぁ………」
それにたくさんの服を抱えて入ったもんだから余計に狭くなる部屋で、俺はさっきのスタッフの反応を伝えた。
だけどAは驚きもせず、��そんなこと？��とあっけらかんとしている。
「バレたらダメなんだって」
『1人や2人なら大したことない』
「大したことないって……」
海外でもそんな感じだったのだろうか。
そりゃ隠してても気づかれる時はあるけど、気づかれたらその時はすぐさま隠れるのが普通だろ？
そんな事も気にせず、未だに鏡で服をチェックしてる彼女はずっと部屋にいる俺を怪訝な顔で見た。
『ねぇ、いつまでいんの』
「…。着替えたらすぐ出てこいよ？」
『はいはい、わかりました』
テキトーに頷いたAに納得はしてないが、試着室から出る。
数分して彼女が出てくると、それを待ってたと言わんばかりにスタッフがAに近づいた。
反射的に俺は彼女の前に立ち、スタッフとの間に入れば
あ、と焦ったスタッフが��すみません��と後ずさり。
〈ご試着ありがとうございました。如何致しますか？〉
『全部買います』
「っ、おい！」
店からすぐ出る約束だっただろ…
すぐさま後ろに振り向き彼女を見ても、俺とは視線を合わせようとしない。
しかも、帽子とマスクしてないじゃん！おい！
〈ありがとうございます！お会計させていただきますね〉
『お願いします』
〈こちらへどうぞ〉
レジへ向かおうとした彼女の腕を掴むとやっと合った視線。
無言の訴えでわかったのか、Aは��大丈夫だって��と俺を宥めるように言う。
だけどやっぱり、スタッフは気づいていた。
お会計が終わった後、すぐに��Aさんですよね��と彼女に聞いていたから。
『…そうです』
〈まさか、日本にいるなんて…！〉
『あはは、そうですよね。』
スタッフも認めたAに心底驚いていた。
昔からファンだったらしく、会えて嬉しいと声を震わせながら。
始終テンションがあがりっぱなしのスタッフにAは店を出る間際で
『あ、私がここに来たことは内緒でお願いしますね？』
といたずらっ子のように笑って言えば、そのスタッフも顔を少し赤くして大きく頷く。
それで口封じするってわけか。
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作者名：蝶-アゲハ-
| 作成日時：2022年3月1日 0時
