紬ぎ歌Ⅱ (ページ6)

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近づいてきた勇人は、
徐に手をおでこに伸ばしたかと思うと

｢お前、熱ある？｣

なんてわざわざ私の背に合わせて屈みながら、
小さな声で尋ねてきた。

｢熱、測ってないよ？｣

なんて言うと呆れた様な顔をしながら

｢おでこ熱いで、お前飯も来てへんやろ｣

｢あ…行ってないや｣

｢何しとんねん、バスと飛行機の席どこや？｣

｢分かんない、見てないもん。｣

｢ちょっと待っとき、あんまうろちょろすんなよ｣

そう言ってマネージャーの所へ向かった勇人。

その姿をボーッと見ていると、
恐らく、後ろで話を聞いていたであろう
翔吾に声をかけられる

｢A、熱あるの？しんどくない？｣

｢ん、大丈夫。あんまり皆に言わないでね。｣

｢俺からはいわないから、あんま無理すんなよ｣

そう言ったあとで気を利かせてか、
銀さんたちの方へ向かった翔吾。

自分の体調よりも皆に迷惑をかけてしまう事の方が
怖くて辛くて苦しくて、目には涙が溜まってくる。

ここで泣いたら負けだ、そうは思っていても
泣きそうになってしまった時ふと目の前に現れた
大きなひとつの影。

｢泣きたいなら今のうちに泣きや、｣

｢…はやっ、と、｣

勇人の声を聞いた瞬間に留めようとしていたものが
一気に溢れてきて止められなくなって。

｢ここにおるから、な？ゆっくり息吸って、｣

勇人の言葉のひとつひとつが魔法のように
体の中にスっと入り込んできて、なぜだか
気分がちょっとだけ楽になった感じがする。

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